出版社内容情報
切なく、妖しく、胸をゆさぶる愛の物語11編を収めた短編小説集。息をのむドラマチックな展開は、あなたを物語世界に一気にさらってゆく!
夕顔写真海と太鼓が歌うとき神話がよみがえるときかなしみの繭は時を越えてカインの末裔春の嵐幻の蝶を求めて悲しみのプレリュードあの夏がくれたもの上弦の月
スーパーの買い物袋を抱えて、夫の待つ家に向かいながら、圭子は知った。結婚しても、妊娠してもなお心の片隅を離れなかった達也への思いが、今散っていくのを。散ってゆく桜は、達也への思い出もあった。その枝越しに心臓のない上弦の月が浮かんでいた。(「上弦の月」より)