出版社内容情報
水田稲作農耕を中心として育まれてきた日本文化。日本の文化は手を動かして豊かな実りが可能になる稲作文化と密接に関係しており、その手の文化が優れた手工芸などを生み出してきた。それに対して朝鮮半島や中国大陸の文化は、牧畜を主体とした大陸の文化。
近年の国際化の中で、欧米やアジアの文化を知り相手の文化に敬意をはらうと同時に、私たちが古くから受け継いできた文化やモラルを相手に理解させることは、ますます重要になってきている。
本書は、日本文化を解くカギを「手」の文化にあるとして、日本経済の発展の過程を振り返りながら、日本の「手の文化」の背景と遊牧民俗の「足の文化」を探る比較文化論。日本文化を再考する書。
第一章 日本の経済社会発展の特色
1 日本に対する世界の評価と社会経済発展に至った特性/12
わが国の概観/12 発展をもたらした要因/15
2 日本の風土の特色/38
自然環境/42 地理的位置/57
土地条件/60 気象/62
生産形態/65
3 経済社会発展のもつ特性/70
経済発展をもたらした要因/70 勤勉・勤労を尊ぶ民族性/147
第二章 日本文化・文明の創造と手(技)
1 人間行動と手/166
手の生理学/166 手と心は一体/170
意思伝達、行動形態等からみた手/177 道具を作り使う手/184
宗教・礼儀作法と手/187
2 手の文化が生まれた背景/189
定着性が手の文化をもたらす/189 日本文化と結び付いた手の言葉の多様性/194
縮み志向と手抜き志向/198
3 日本文化と結びついた手/202
食事の箸と手/202 主婦の城・炊事場と手/205
読み・書き・算盤と手/207 工芸品と手の技/212
柔構造と手/217
第三章 稲作農耕文化と遊牧文化
1
日本文化や東西の文化比較、文化人類学等については、学生時代から非常に興味があり、図書館にも通ったりして、いろいろな書物を読んだりノートに書きとめて来た。このことは社会人になっても続き、購入する図書もこの手のものが多くなった。そして土・日曜日は、各大学が行っている社会人向けの文化講演会、講座などを聴講する機会を極力もつように努めて来た。
ここにまとめた内容のものは、私があちこちで話してきた時期や時代背景が、日本経済が成長過程にあって、またバブルの最盛期にも当たる頃で、諸外国との貿易摩擦が生じ、遂には日本人の思想や行動形態等文化そのものにまで及んで、日本異質論が叫ばれ相手国から、わが国に厳しい注文が突き付けられているときであった。また、日本の経済発展の源泉は何なのかとか、西洋の先進諸国とどう違うのかという文化比較の観点からの盛んに議論が文化人類学者等から出されているときでもあった。
彼我の文化比較の中にあって、わが日本民族とはそもそもどのような成り立ちをもつものなのか、どのような環境の下にあって文化や民族性が、育まれ形成されて行ったのか、ヨーロッパの先進諸国民とどのように文化面からみて違っているのか等々考えるきであった。一方足に関する言葉も、相当あることにも驚かされたが、手の言葉の数には遥かに及ばないということであった。
日本人は、手によって文化を形成してきた民族であるということがよく分かる。この手、足に関する言葉等をまとめるのに長い年月を要することとなった。見たり聴いたりして来たいろいろな記述などの中で、手・足に関する単語、熟語等を書き留め、追加し整理して今日に至った。それが付章に記載している「手に関する言葉、詞、諺、字句、漢字、用語等」、「足に関する言葉、詞、諺、字句、漢字、用語等」である。
手と足に関する文化的な事象、考え方などについて、いろいろな面から取り上げて論述したものがこの一冊の本となった。