内容説明
生物と生物、生物と環境との関係を調べる、生物学の一分野である生態学。生きものについて知りたい、自然を守りたいと願う人にとって、生態学的な見方は必ず役に立つ。自然と生きもの、人間との関係を見つめ直す7つの章。
目次
第1章 人に囲まれて
第2章 暮らしのなかで
第3章 文化に触れて
第4章 外国を旅して
第5章 里山に生きて
第6章 森を歩いて
第7章 研究をとおして
著者等紹介
伊勢武史[イセタケシ]
1972年生まれ。京都大学フィールド科学教育研究センター准教授。ハーバード大学大学院進化・個体生物学部修了(Ph.D.)。独立行政法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)特任研究員、兵庫県立大学大学院シミュレーション学研究科准教授を経て、2014年より現職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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どんぐり
95
「目のツケドコロ」シリーズのエッセイ。生態学は、生物学の一分野で環境のなかで生きている生物について考える学問だ。生態学者が自然界の何をどう見ているのか、野山を駆けめぐりながらこの分野で研究している著者の世界をのぞくことができる。森に行くときに使う乗り物は二酸化炭素を排出するのでよくないと〈環境負荷〉を考えたり、自然のなかにある生態系の〈物質循環〉や、生物がどれくらい首尾よく子孫を残せるかの〈適応度〉など、専門家の生物学的現象を見る目のツケドコロが面白い。→2021/08/29
けんとまん1007
53
生態学者・・・思考の幅が広いんだろうと思いながら読んだら、遥かに超えていた。目のツケドコロ・・・視点、視野、視座とかいろいろの言い方があるが、ツケドコロという表現がいい。読みながら、そこはかとなく同意できるし、そうなんだよなあ~と思った。自分も、これくらい、いろんな幅でものを観たい。2021/05/13
Tenouji
23
著者の語りだけでなく、研究者やアーティストのインタビューもあり、話題が多岐にわたって面白い。やっぱり、生態学者は、幅広い時間スケールの視点を持っていて、風景もそのように捉えるというのが新鮮な印象を受けました、個人的には。2021/05/28
ミッチ
12
動植物に関する目のツケドコロかと思ったら、なんと琳派等の芸術にまで言及するとは‥‥伊勢武史さんのスケールには驚かされた。2021/04/08
茶幸才斎
10
目の前の景色が、物理作用と生物の営みと人の文明的働きかけの無数の因果の束の時間的変遷の一断面として知覚される。熊本天草の居酒屋の食材、京都の苔むす庭、米国の広大な原野、郷里の里山、趣味の魚釣り、森の散策、ペンギンのフォルム、感染症の拡大、それらが筆者の目にどう映っているか語り、生態学的な物の見方と考え方を紹介している本。生態系は、人類が20世紀になってようやく「発見」できた難しい概念である。人が地球環境に依拠した暮らしを続けるには、目の前の景色に対する知的な想像力と繊細な理解力が、今後ますます要求される。2021/10/07