感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ぶんこ
43
半田製作所でははありませんが、中島飛行機に身内が関係していたこともあって読んでみました。色々と驚くことばかりで、終戦直後社員が全員解雇という形をとられていた事。興銀による債権回収の熾烈さ。一番知りたかったある工場の事は殆ど書かれていなかったが、戦争末期に航空機技術者が減り、急遽選抜された?事務系社員が、赤いお小水を出しながら猛勉強した事は書かれてなかったのが残念です。そういった事よりも政治的な事に重きを置いた内容でした。2017/09/27
さくらさくら
31
私の父は中島飛行機で徴用工として19歳で終戦を迎えました。父は私が20台前半で亡くなったのと、以前の私は「戦中の日本=悪」との概念を持っていたので、父から見れば戦中の事は話しにくかったのか、空襲の話以外ほとんど聞いた事がなく、当時の父の事が理解出来るかもしれないと思い読み始めました。この本は中島飛行機に残された資料や、社員や工場近郊の市民等の証言を元に書かれています。読み終えた今、父に対して申し訳ない気持ちで一杯です。私の視野がもう少し広ければ父から戦中の話をもっと聞けたのに…残念で仕方がないです。2019/09/14
roatsu
11
中島飛行機が迎えた敗戦という未曽有の事態での出来事、大混乱の戦後どう再出発したか追った一冊。今更ながらもかの大企業が発展させた先進技術の凄さ、現代でも通用するであろう創業者・知久平翁の慧眼と馬車馬のような実現力に脱帽。戦後の興銀との丁々発止は企業小説として面白い。ただ、中島ノートという一級史料を基に筆を進めてはいるが、著者のやや偏向的な主観や戦史への考察・知識不足で決めつけ調で書いた部分があるのが残念。朝鮮人徴用工のくだりなど、取材で得た証言などさておいて自身の所感ではないかと思ってしまう。2015/05/18
月をみるもの
9
中島飛行機は、イマ風に言えば技術者を中心としたハイテクベンチャーであった。その成長速度は、SpaceX もかくや、と言わんばかり。しかし当初中島に出資していた川西は、経営路線の対立により、大量の技術者をひきぬいて川西航空機を設立。この事件は創業者知久平のトラウマとなり、その後のさらなる成長にも関わらず上場を拒み続けた。戦後の興銀との対決は、この出来事が遠因となったというのが著者の分析。技術と資本の相克、さらには政治・戦争の関わりという観点から、中島飛行機の歴史はより深く研究されるべきだろう。2016/10/22
長島芳明
7
中島飛行機を調べているので、その一環として読んだ。著者のブログを読んだことがあり、「イデオロギー的に左翼っぽいな。大丈夫かな」と案じたが、公正中立に中島飛行機について語っていた。日本特有(?)の「宗教的左翼」ではない。中島飛行機半田製作所の学徒関係の話が多かったが、敗戦後の話が面白かった。債権回収をする興銀と、会社再建を目指す中島との争いが面白い。著者の私見が多くて興銀が悪役として書かれているので、そこだけ公正中立ではなかったが、戦後復興を目指す技術者たちの奮闘に胸が熱くなる。2015/04/13




