出版社内容情報
ナノテクノロジーの急速な発展の影で、ナノ製品(物質)への潜在的不安が拡大しかねない情勢にある。そこでまず、ナノ物質の特性である高い表面活性や優れた細胞膜透過能力などが、人の健康にどのような影響を及ぼすかを客観的に評価すること(安全性評価)が必要となる。第1級の海外雑誌、研究報告書から20論文を厳選し翻訳した本書は、ナノテクノロジーの健康影響に焦点を当てた我が国初の資料集であるといえる。
ナノ粒子の吸入による生体影響研究では世界でトップを走るロチェスター大学環境医学部教授のG.オーバードースター教授が協力(序文、第1章総説を執筆)。
構成・訳註:小林 剛(元カリフォルニア大学教授)
PART1 総説
第1章 ナノトキシコロジー―超微小粒子研究から浮上する科学領域―
第2章 HEIナノ粒子研究リポート― 常者および喘息被験者における炭素超微小粒子暴露の影響―
第3章 超微小粒子の生体内毒性研究
PART2 ナノ物質の健康影響研究
第4章 超微小粒子汚染物質は酸化性ストレスおよびミトコンドリア損傷を誘発する
第5章 ヒトにおける吸入粒子の循環血液への侵入経路
第6章 健常および閉塞性肺における超微小粒子の沈着とクリアランス
第7章 超微小ポリスチレン粒子のサイズ依存性の炎症前駆影響―超微小粒子の活性増強における表面積と酸化性ストレスの役割―
第8章 ハムスターにおける気管内注入超微小粒子の肺から全身循環血液への侵入
第9章 超微小粒子の毒性研究
第10章 電子分光画像によるハムスターの肺内の酸化銅超微小粒子の検出
第11章 ヒトの呼吸器官における安定性超微小粒子の沈着定量
PART3 ナノ製品の毒性研究
第12章 ナノ素材製品(フラーレンC60)は若齢オオクチクロマスに酸化性ストレスを誘発する
第13章 マウスに対する単層カーボンナノチューブの気管内注入後7日および90日における肺毒性
PART4 環境中ナノ粒子の健康影響
第14章 粒子大気汚染と急性健康影響
第15章 呼吸器影響は超微小粒子の数との関連性を示す
第16章 心臓血管系疾患死亡率と粒子大気汚染長期暴露―疾患に至る一般的病理生理学的経路の疫学的立証―
第17章 ディーゼル排気のヘルスリスク
第18章 米国における粒子状物質規制―その現状と方向―
第19章 米国の大気中微小粒子PM2.5の規制
第20章 ディーゼル排気の健康影響評価の動向