内容説明
1959年アメリカ合衆国、命を脅かすほどの黒人差別が暗黙のうちに認められていた時代。闇に閉ざされた実態を明らかにするため、全身を黒く変色させ、米国南部へ潜入した白人ジャーナリストがいた。戦争による盲目、そして光を突然とり戻すという数奇を体験した白人グリフィンがそこで得た真実は?当時、世界に衝撃を与えた“南部の旅”日記に、その後の余波、著者の経歴を含むあとがき等が大幅加筆。今尚、アメリカのあり方を深く問い続ける名著、平井イサク名訳(全面改訳)により、待望の復刻。
目次
はじめに(スタッズ・ターケル)
プロローグ 1961
南部の旅 1959
余波 1960
エピローグ 1976
“異質な存在”を超えて 1979
あとがき 2004(ロベルト・ボナッチ)
著者等紹介
平井イサク[ヒライイサク]
1929年生まれ。英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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dexter4620
12
時代を超える名著。薬と日焼けサロンで黒人と化した白人の著者が、黒人差別の残る1950年代のアメリカ南部を歩いた日記。凄まじい内容もそうだが、巻末で知る著者の生い立ち(フランスにてゲシュタポの処刑リストに上がった)にも衝撃を受けた。彼だからこそ書き得た名作なのだと思う。2019/09/17
あび
12
中身を知ろうともせずに肌の色のみで相手をカテゴライズしてしまい、差別の目を向け続ける白人たち。人種差別の闇を知ることができた。2016/11/14
ひじき
11
南部学クラスのテキスト。原書で読了。1959年、白人ジャーナリストが黒人に化けて人種差別たけなわの深南部を旅したルポである。実際彼は「化ける」のだ。肌を黒くする薬を飲み、太陽灯を浴びて、数日間でみごとに黒人に変身し、黒人が南部でどう扱われているか、いかにリベラルであろうと白人でいる限りわかりえなかったことを、文字通り肌で知った。白人たちの蔑みの視線を浴び、年齢風体に関係なく「おい、ボーイ」と呼びつけられ、町では黒人用トイレを探すのにも苦労する。あっさり殺される危険も隣り合わせ。ノーベル賞をあげたい実験だ。2014/01/30
デビっちん
9
支配者が支配される側の中に放り込まれたとき、その肉体と精神に生じたことは……。白人の著者は、薬を飲み紫外線に全身を曝すことで肌を黒くし、人種差別が激しかった米国南部で黒人に扮して生活した。同じ街でも、その印象や人々の対応は、肌の色が異なるだけでガラリと変わった。人種差別は、個人の資質ではなく、肌の色だけが違っていることを本書は証明している。著者は最後に、異質な存在などというものはこの世に存在せず、そう考えていたのは自分自身であると述べている。異文化間の理解は、自分を見つめ直すことからと言われた気がした。2016/02/06
FOTD
8
偶然、「肌を焼き塗り黒人社会へ深く入った白人の物語」という背表紙の文字が眼に入り手にとった。まさにそのとおりの本。小説ではなく、著者の実体験の日記だ。白人としては普通にできたことが黒人になったことで制限される毎日を数週間経験することで、人種差別の本質に迫っていく。知識がほとんどなかったので、書かれていることは驚くことばかりだった。人種差別は恐ろしいと思った。この日記は1959年のものだが、現在でも問題は残っている。すべての人々が平和に暮らしていける社会を思って本を置いた。2019/08/13