1 ~ 1件/全1件
- 評価
購入履歴本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アン・シャーリーこと寺
68
広島県尾道で深夜23時から開店する古本屋「弐拾dB(にじゅうでしべる)」を営業している著者の自伝的初エッセイ集。Webで連載していた時から読んでいたが、刊行にあたって日記や写真(美しい写真が多い)も加えてあり、いい本である。著者は当年28歳。野呂邦暢の古本屋小説『愛についてのデッサン』の主人公・佐古啓介が27歳。そんな事がふと頭をよぎる。開店してもう5~6年営業しているそうだが、「継続は力なり」だと感心する。中原中也をはじめとして、詩が好きだそうだが、著者が名詩から好きな一節を紹介してくれていて嬉しい。2021/11/28
ナミのママ
67
尾道に平日は午後23時〜午前3時で営業している古本屋『弐拾dB(にじゅうでしべる)』がある。5年目を迎えたという店の店主は1993年生まれ。タイムスリップしたような写真と日記、エッセイ。雑誌掲載と書き下ろしをまとめた書籍だがなんとも雰囲気がある(あえてまとまっているとは言いたくない)。深夜に朗読するものも含めて多数の詩が掲載されている。久しぶりに詩に触れた。こんなに深いものだったのかと改めて気がつかされる。手元に置いて再読したい一冊。2022/03/20
masa
60
詩人は書いた。「どんな鳥も想像力より高く飛べる鳥はいない。人間に与えられた能力のなかで、一番素晴らしいものは想像力である」と。動画には情報が渋滞していて想像の入る余地がないけれど、詩や物語は行間を想像力で補完してこそ完成品となる。僕らは同じものを見ていても、それぞれ違うものに見えてしまう。だから自分ではことばにできなかった想いが文字になっていたとき、泣きたくなる。少しだけわかりあえたつもりになってみたくなる。未知の恐怖に世界が染められてしまうような夜にも想像力を羽ばたかせ、今宵も息をするように頁をめくる。2021/12/25
なる
41
就職することをやめて古本屋の道を選び、今もそれを実現している著者によるエッセイ。詩集が好きで将来なりたいもの・詩人と学生時代に(現実問題はともかく)書いていたというし言葉づかいがリリカルで好みの文体。所々に中也リスペクトな部分が見え隠れしていて微笑ましい。とはいえ好きな本に囲まれるだけでは食べて行かれぬ生々しさも少しだけ見えてくる。経営面は巧妙に見え隠れさせながらも、著者がどれだけ本を好きなのかが見えてくるのが良い。これくらいのコミュニケーション能力がないと軌道に乗るのは難しいだろうから努力も見える。2022/02/28
羽
28
実家に帰った時に母にすすめられて読んだ。尾道で深夜営業の古本屋 弐捨dB(ニジュウデシベル)を営む著者のエッセイ。この本にノスタルジーを感じるのは、著者がわたしと同郷で同年代だからという理由だけではない。故郷から離れた学生時代、一度レールを外れたら再び王道コースには戻れない人生、生まれ故郷に戻ってきたときに目にする鄙びた風景。似た感情を抱いて生きている人はきっとたくさんいる。感傷的すぎず、澄ましているわけでもない、本音の文章が心地よかった。土日は日中もお店が空いているので、今度行ってみよう。2022/05/02