内容説明
“テロリズム”とは何か?今、“テロリズム”の季節が始まった六〇年安保から半世紀余りが経つ。すでに現代史としていかに記述していくのかが問われている。われわれは、厳しく困難ではあっても“テロリズム”の恐怖に怯えることなく、真正面から、これに立ち向かっていかなければならない。作者みずからが焚書し幻の書となっている『政治少年死す』『風流夢譚』も復刻掲載し、その歴史的意味を解明する。
目次
対談 山口二矢と三島由紀夫をめぐって(若松孝二;鈴木邦男)
対談 二つのテロ事件から言論を考える(板坂剛;鈴木邦男)
政治テロのはじまり一九六〇年代
復刻資料(大江健三郎「政治少年死す セヴンティーン第二部」―『文学界』一九六一年二月号;深沢七郎「風流夢譚」―『中央公論』一九六〇年十二月号;深沢七郎「これがおいらの祖國だナ日記」―『群像』一九五九年十月号;各社社告)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
安南
41
幻の小説大江健三郎の『政治少年死す』深沢七郎『風流夢譚』収録。『風流〜』の方は学生時代に大学の図書館でコピーしたものを読んでいたが、悪趣味なだけ。この二作、文学的には天と地程の差があると思う。それに山口二矢と小森一孝は同じ右翼で年の頃も近いことからセットで語られてしまうのも不快だ。鈴木邦男氏曰く「女子どもを殺すなんて右翼道にもとるということで、圧倒的に多くの右翼の人たちは小森を弁護していない」とはいえこの小森事件の方がその後のメディアへの影響は大きい。行き過ぎた自主規制の慣習はこの事件後に始まった。2016/01/30
ゆーいちろー
0
隠されたタブーなんてものはどこにでもあるのだろうが、まさか一度は世間に現れた文学作品が現在もなお公けには発禁扱いで、本書のようなゲリラ出版でしか紙の書物として読むことができないのは考えさせられるものがある。たしかに「風流夢譚」に関しては「事件」になってしまったのだが…しかし、大江の「政治少年死す」は今一度世に出してもよいのではないか?おそらく大江作品の中で唯一の「社会派」小説だと思うし、小説としても決して悪いものではない。むしろ「戦後民主主義者が描く右翼」という思考実験はとても刺激的だ。2016/09/03
mrbeats197912
0
「政治革命小説」の傑作、深沢七郎の『風流夢譚』と大江健三郎の『政治少年死す』も収録されてる。でも、革命とは言いながら、夢で天皇の首を切ったり、オナニーしまくるだけ、という狂ったユーモア。2013/01/06