内容説明
水俣病患者は病だけでなく、責任企業や行政に振り回され続け、差別され、分断され、まさに苦界の道であった。関西に移住していた患者たちがチッソ・熊本県・国の責任と賠償を求めて1982年に提訴したチッソ水俣病関西訴訟は2004年の最高裁で行政責任を認めさせ、多くの未認定患者救済の道を切り開いた。しかし、1959年末までに移住した8人には国・県の責任を認めず、厳しい国の認定基準も否定しなかった。最高裁判決後にやっと県から認定された患者は6人に過ぎず、さらにチッソは裁判で決着済みと1973年に締結した補償協定の実行も拒否した。最高裁判決後も国・県・チッソの責任を問い続けた患者たちの受難の道を辿る聞き書きの続編。
目次
第一章 高裁判決の陰で泣いた患者たち
第二章 岩本夏義さんの長女・恵さんと坂本美代子さん
第三章 上告審中に患者会分裂、美代子さん・恵さんら自主行動へ
第四章 行政認定求めて熊本県・環境省へ
第五章 行政認定出ても、チッソは補償協定を拒否
第六章 補償金訴訟を起こした人は敗訴
第七章 勝訴後認定者には協定補償なし
終章 美代子さん 無念の逝去 語り継ぐ恵さん
資料編 『続・水俣まんだら―チッソ水俣病関西訴訟の患者たち』
著者等紹介
木野茂[キノシゲル]
1941年大阪府生まれ。1966年、大阪市立大学大学院理学研究科修士課程修了。同年、同大学理学部教員。理学博士。1971年より公害問題に取り組む。1983年より大阪市大自主講座を主宰。2005年~2015年、立命館大学共通教育推進機構教授
山中由紀[ヤマナカユキ]
1969年大阪府生まれ。2002年、大阪市立大学大学院経済学研究科後期博士課程満了。専攻:環境社会経済学。1990年、大阪市大自主講座に参加し、関西在住の水俣病患者と出会う。1995年から香川県豊島の産廃不法投棄事件の調査に参加。2009年から2022年まで、環境教育系NPOに勤務。現在は2001年に始めた「生命・環境系の週間テレビ予報」のWeb発信を続けている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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