内容説明
クルマ社会の負の側面を指摘し警鐘を鳴らしたのは宇沢弘文の『自動車の社会的費用』(1974年)であった。宇沢は、自動車の所有者・使用者が負担すべき費用を負担せず、外部に転嫁していることが無秩序な自動車依存が拡大する理由であるとして、その額は自動車1台あたり年額で約200万円に及ぶことを示した。しかしその後も自動車と道路の増加は止まらなかった。その行き着く先として80歳を過ぎても自動車を運転しなければ日常生活も困難となるクルマ社会が形成された。宇沢の論考から半世紀が経過したいま、改めて宇沢ほか先人の指摘を振り返るとともに、自動車に依存した社会の転換について改めて現状を反映して考える。
目次
1 クルマ社会は何をもたらしたか
2 社会的費用半世紀
3 住み方・動き方
4 道路に関する動き
5 終わらぬ「交通戦争」
6 現代の社会的費用論
7 技術は社会的費用を解決しない
8 ポストコロナのクルマ社会
9 物流をどうするか
10 公共交通と社会的共通資本
著者等紹介
上岡直見[カミオカナオミ]
1953年東京都生まれ。2002年より法政大学非常勤講師(環境政策)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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えすてい
12
中日新聞で紹介された本。著者らしく「人権」を盾にした批判は旺盛だが、やはり具体的な対応や解決策には弱いと言わざるを得ない。公共交通の衰退で自動車なくして最低限度の生活すらできなくなり、旧著にはなかったコロナ禍の「新しい生活様式」に伴う車生活を批判し、EVやFCVも走る原発と断罪、MaaSも乗り換え案内アプリだとこき下ろす。小さな(公共)交通によるコンパクトシティへの移行を提唱してるが、公共交通の深刻な人手不足や人口減少で独立採算性限界の疲弊をどう転換するかは弱すぎる。批判だけは立派に踏襲する著者である。2022/07/25
Hiroki Nishizumi
4
多くの本が診察は極めて正確で正しいが、処方箋はあまり的確ではない事が多いが、この本もその部類か。モーダルシフトは簡単には出来ないものだ。2023/12/22
ちびお
0
自動車の問題、社会的共通資本からの観点、事故、環境問題、過疎化、公共の交通機関との兼ね合い、実に様々な問題と絡んでくる。2024/06/28
たてたてヨコヨコ
0
偏った見方だな、と思うところもありつつも、このような視点で、一人一人が車の社会的費用を認識すること自体はよい試みだと思った。人口減少著しいこの日本で、いかにインフラを維持して生活していくべきか、都市(人々の生活圏)をどうデザインするか、真剣に考えて施策を実行していく時期に来ていると思う。 歩行者に優しくない道路設計(歩道橋陸橋)、生前の父もよく文句を言っていたな・・・2023/12/28