内容説明
中朝国境の大河・鴨緑江を挟んで北朝鮮・新義州と向かい合う中国・丹東。この2つの都市は、世界に広まったその断絶のイメージとは異なり、国境を挟んだ多彩で活発な交流によって、互いを支え合う国境都市だ。それは脱北者たちの脱出ルート、あるいは北朝鮮の鏡とは異なる姿といえる。そこで北朝鮮人・北朝鮮華僑・中国朝鮮族・韓国人の4集団および中国人たちは活発に貿易し、交流を繰り広げる。こうした暮らしぶりを丹東の人びとは「鴨緑江には国境がない」と表現する。韓国の気鋭の人類学者が中朝国境都市・丹東に赴いて彼らのあいだで暮らしつつ、こと細かに観察してしたためた迫真のルポルタージュ。
目次
第1章 人類学者、国境都市・丹東を読む
第2章 現場のなかへ
第3章 四集団のはなし―北朝鮮人・北朝鮮華僑・朝鮮族・韓国人
第4章 丹東、三カ国貿易の中心地
第5章 中朝国境のふたつのコード、境界あるいは共有
第6章 四集団、コリア語を共有する―国民・民族アイデンティティの地形図
第7章 丹東、三カ国の過去・現在・未来
著者等紹介
姜柱源[カンジュウォン]
ソウル大学校人類学科大学院にて修士・博士号(2012年)を取得した。2000年夏より中朝国境地域(豆満江・鴨緑江)および中国・丹東を訪問している。そこで北朝鮮人・北朝鮮華僑・朝鮮族・韓国人との関係を結び、国境に頼りつつ暮らす人びとの生を自分なりに地道に記録しようと努力している。2020年春からは坡州臨津江・民間人出入統制線・DMZ周辺を行き来しながら、分断の風景と生が意味するものを学んでいる。こうした作業を通じ、北朝鮮と韓国社会の見知らぬ姿を見い出し、出会う努力を傾けている。韓半島の平和と共存について思い悩むことを生業とする人類学者の道を歩んでいる。著書に『中朝国境都市・丹東を読む―私は今日も国境を築いては崩す』(2013、韓国研究財団優秀図書事後支援事業選定)などがある
市村繁和[イチムラシゲカズ]
出版業界にて長く働きながら、当初、韓国語を学ぶ目的にて渡韓。その後、韓国外国語大学国際地域大学院韓国学科にて博士学位(2021年、韓国学(韓国社会・文化専攻))を取得し、現在、成蹊大学アジア太平洋研究センター客員研究員である。おもな関心領域は、ポストコロニアル状況における日韓の社会文化交流および日韓連帯史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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