内容説明
奴隷制廃止論者だった風景画の巨匠J・M・W・ターナー、「戦争レクイエム」を作曲した平和主義者ベンジャミン・ブリテン、帝国をからかう現代美術家インカ・ショニバレ、そして、ナチスの脅威がイギリス本土に迫っていた1941年、毛皮のコートのポケットに石を詰め込んで入水したヴァージニア・ウルフ…これら得難い人々との時空を超えた対話を求めてイギリス各地を訪ねた紀行エッセイ。前著『メデューサの首―私のイタリア人文紀行』に次ぐ第二弾。
目次
ケンブリッジ―知の版図
オールドバラ―あとどのくらい?
ロンドン(1)―マハゴニー
ロンドン(2)―帝国をからかう
ロンドン(3)―希望のはかなさ
はるかなウーズ河畔
著者等紹介
徐京植[ソキョンシク]
1951年京都市に生まれる。早稲田大学第一文学部(フランス文学専攻)卒業。現在、東京経済大学全学共通教育センター教員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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hasegawa noboru
5
<私は京都市に生まれた在日朝鮮人である>という明確な自己認識のもと、異国の文学、音楽、絵画、<美術という文化現象をつねにディアスポラ/マイノリティーという立場から再読し、脱構築しようとする>著者の語らんとするところは明瞭である。いかんせん浅学寡聞の身、「戦争レクイエム」のブリテン、ブレヒト脚本のオペラ「マハゴニー」、アフリカ系英人の美術家インカ・ションバレやイングリット・ポラードのこと等悲しいかな初めて知ることばかりだったが、写真版のページの多さにも助けられて、読みにくいことはなかった。通奏低音のごとく2021/02/27