内容説明
アマゾネスの女王・ペンテジレーアと英雄アキレスの恋を描いた悲劇。愛情と憎悪、希望と絶望が交錯する二人の世界を、哲学者の仲正昌樹による、単行本としては80年ぶりの新訳で届ける。約50頁におよぶ訳者の「解説」も読み応えあり!
著者等紹介
仲正昌樹[ナカマサマサキ]
1963年広島生まれ。東京大学総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程修了(学術博士)。現在、金沢大学法学類教授。専門は、法哲学、政治思想史、ドイツ文学。古典を最も分かりやすく読み解くことで定評がある。また、近年は、『Pure Nation』(あごうさとし構成・演出)でドラマトゥルクを担当し自ら役者を演じるなど、現代思想の芸術への応用の試みにも関わっている。著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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nightowl
2
トロイ戦争の真只中に現れた女性達だけの部族、アマゾネス。アキレスを狙う目的とは。何故アマゾネスには男性がいないのか。自らの気持ちに揺れる女王のペンテジレーアは凄惨な悲劇のヒロインとなる。清く正しく美しくを理想としたゲーテに対し、秘めてはいても人間はもっと荒々しい獣性を持った生き物であると表現するような作品。アマゾネスの様子は乙女の花園とも言えたので、作者の我が後半かなり強く出て来るとは思いもよらず。原典の一つである「ホメロス後日譚」から大胆な改変。クライストの主張は頷けるので他作品にも触れるか検討中。2020/10/30
中海
0
なかなか良かった。現代を描いた作品は、やれ職業が人種が生活圏が、と何のためかわからない設定に翻弄されがちだが、こういうむかーしの戦いを描いた作品は清々しく感じた。戦うことで、生まれ持った体力知力を存分に鍛えて発揮する。物語はあっさりで、後半の解説が熱い。2021/05/16
Lieu
0
古典劇の静的な世界とは明らかに異質な人物造型である。弓矢に邪魔な片方の乳を切り落とすという設定は現代でも異様だ。だがそんな勇猛な女戦士が敵の男に恋をして顔を赤らめたり「もう一つの乳房に情愛は残っている」という趣旨の内容を語ったり、この男のことで錯乱するところなどは、「どんな女でも公私混同する」という作者の時代の女性観を引きずっているのかもしれない。かといってアキレスだって敵は敵と割り切り、死を恐れず戦う「男らしい男」ではない。いわゆる近代の男性規範に合致する男は脇役のオデュッセウスただ一人である。2020/12/05
sugsyu
0
シアターE9での上演より。トロイア戦争の狂乱、アマゾネスの奇習、英雄アキレウスの傲慢、そしてロマンスの文法さえ踏み破り、女王ペンテジレーアがたどり着く地平。恋というには余りに凄絶。悲劇、という範疇にさえ収まり切れないなにものか。2020/10/28