内容説明
『罪と罰』以降の長編作品を脱構築する試み。近代ロシア社会の苛酷な現実の内側でとぐろを巻くドストエフスキーの“霊的な存在”たる革命的精神、その転回と障害を読み解く。
目次
1 「転向作家」の革命的精神、あるいは霊的な存在
2 『罪と罰』エピローグの問題
3 ラスコーリニコフ、あるいは挫折したイデオローグ
4 幼児性、その勝利と敗北
5 障害としてのイデオロギー批判
6 モンスターの創造―革命でもなく、反革命でもなく
7 「放浪者」マカールのイデーをめぐって
8 未完の革命家アリョーシャ
9 人間よ、祈りのなかで溶けてしまえ!
10 霊的な存在、その最後の転回
著者等紹介
福田勝美[フクダマサヨシ]
1956年、福岡県生まれ。早稲田大学政経学部卒(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
yoyogi kazuo
0
著者独特の用語(「霊的存在」とか「転回」とか「障害」といった)が却って論旨を解りにくくさせている部分もあると思う。著者によれば、「ドストエフスキーはシベリア流刑で<転向>したのではなく<転回>したのだ」というが、単なる言葉の言い換えではないのか。『白痴』を論じた箇所、そして『悪霊』のスタヴローギンを論じた章は、出色だと思う。全体的には、本を置くこともできず一気に読了するほど大変興味深い内容だった。これほど重厚なドストエフスキー論を書いた著者と、この本を出版してくれた出版社には感謝の念しか起こらない。 2019/10/14