感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
106
導入部が独特で引き込まれる。通りの暗さと疑念を抱かせる男の横顔がチラと見える気がした。主人公のツヴァイクが教え子のグスタフの行動を追ううちに、教え子の思想や哲学をも推敲していくのが話のキーであろうが、ものすごい存在感のナターシャにクラクラとした。この女、一筋縄ではいかないファム・ファタールかと疑いつつ読んでいたのだが、どうも本性のところで物事を判断できるようだ。途中からは、次はどうするナターシャ、ああナターシャと、気になるのはそこばっかり。1966年の作品。二つの大戦の影響もしっかりと。2019/08/04
チェアー
11
ひどく古典的なミステリー。というか、これをミステリーと言っていいのか分からない。謎解きの要素は少なくて、むしろ思想書と言ったらいいのか。うーん、でも思想の部分はそれほど深みがあるわけでもなくて。質問すれば、みんな答えてくれる、牧歌的な時代。 2019/06/13
Inzaghico (Etsuko Oshita)
4
最初はやたら登場人物が多くて、舞台も二転三転して、すっと情景が頭に入ってこなかったけれど、読み進めてゆくうちに、頭の中に絵が描けた。つくづく日本の登場人物紹介表を最初に思いついた人は偉いと思う。感謝状を差し上げたい。 最後に思わぬところに着地するのだが、その正否はわたし自身は答えがまだ見つからない。それにしても、親子ほど歳の離れた女性から粉かけられても手を出さない哲学教授の堅物ぶりというか超越ぶりが見もの。2019/05/27