内容説明
戦後推理小説文壇の巨匠、鮎川哲也の知られざる作品がよみがえる。未完の遺稿「白樺荘事件」、ファン待望の単行本初収録!雪の山荘を舞台にした連続殺人事件に名探偵・星影龍三が挑む「白の恐怖」を半世紀ぶりに復刻し、ロマンチシズムの色気が漂う「寒椿」、無邪気さの中に恐怖を描いた掌編「草が茂った頃に」など、単行本未収録作品を一挙集成。別名義で発表された十二作の絵物語も挿絵付きで完全収録。
著者等紹介
鮎川哲也[アユカワテツヤ]
本名・中川透。1919(大8)年、東京生まれ。終戦後はGHQ勤務の傍ら、様々な筆名を用いて雑誌へ短編を投稿し、50年には『宝石』100万円懸賞の長篇部門へ投稿した「ペトロフ事件」(中川透名義)が第一席で入選した。56年、講談社が公募していた「書下し長篇探偵小説全集」の第13巻「十三の椅子」へ応募した「黒いトランク」が入選し、本格的に作家活動を開始する。60年、「憎悪の化石」と「黒い白鳥」で第13回日本探偵作家クラブ賞長編賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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geshi
23
巨匠の入手困難な作品や別名義作品そして未完の遺稿をまとめたコアなファン向けの作品集。『白の恐怖』は評価低いのも致し方なし。サスペンスの雰囲気作りはいいのに明らかに枚数足りずに走ってしまっていて、肝心の仕掛けがうまく噛み合っていない。そのセルフリメイクである『白樺荘事件』は星影龍三シリーズではなく三番館シリーズへと変更したからユーモア色を前に出してくる。これから連続殺人劇の幕が上がるという所で絶筆となっているのが、分かっていはいても残念。良くも悪くも昭和の空気を感じさせる作品が多かった。2017/12/30
西
16
鮎川哲也さんの長編で唯一読めていなかった「白の恐怖」が読めて良かった。ラストのある真相は全く頭になく、時代を考えると決して凡作ではないと思う。そして絶筆となった「白樺荘事件」。白の恐怖と異なる部分が出てきて、どのような展開を考えておられたのか、すごく興味深い。無粋かもしれないけど、有栖川有栖さんとか折原一さんとか、続きを書いてくれないかなあ。この作品を刊行してくださった論創社さんに感謝。2019/02/25
ふう
9
「白の恐怖」と「白樺荘事件」がメインの作品集だが、他にも昭和のかほりムンムンの大人向けジュブナイル(矛盾)みたいな超短篇たちがこれまたいい味出してる。挿絵もすごくいい感じ。「遺書」、「殺し屋の悲劇」が好み。「白の恐怖」が結構楽しめたので未完の「白樺荘事件」が返す返すも惜しい。あぁ最後まで読みたかったなあ。2018/02/05
はまちゃん
5
鮎川哲也氏の短編・中編、そして未完のまま終わってしまった「白樺荘事件」を収録した作品集。昭和の香りが漂う作品が多いが、これはこれで楽しめる。「白の恐怖」を改稿した「白樺荘事件」がどんな感じで展開されていくのか読みたかったなぁ。残念ながら鮎川氏の作品はほとんど読んだことがないが、「黒いトランク」くらいは読んでみようと思う。2022/11/06
しゅー
4
白の恐怖面白かったなぁー。昭和感漂うお話し。 作者未完で亡くなるのは残念だが未完でも本にしてくれる人がいるというのは愛されている事なんだなぁ2019/04/04