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内容説明
貸本マンガから見える戦後社会と大衆文化。
目次
1章 貸本マンガの誕生まで
2章 貸本マンガの隆盛
3章 貸本マンガ・一九六〇
4章 貸本マンガ 衰退期の光芒
5章 貸本マンガと新宿・十二社と
6章 貸本マンガと戦後大衆文化
7章 貸本マンガの「場所」
著者等紹介
高野慎三[タカノシンゾウ]
1940年、東京都生まれ。ペンネームは権藤晋(ごんどうすすむ)。書評紙編集者、青林堂の『ガロ』編集者を経て、北冬書房代表。貸本マンガ史研究会会員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Willie the Wildcat
54
文字の戦後復興。形態と中身の変化も時代を反映。前者は紙芝居・赤本から貸本、後者は倫理・道徳から劇画への変遷。文字の枯渇補助から、生活品質の向上に文字の役割が転換。高度成長期の齎す人々の”陰陽”への向き合い方が画風にも影響。恣意的というより、人間として自然な心情ではなかろうか。興味深いのが記載の70年代の人気漫画ベストテン。手塚氏や石ノ森氏ではなく「つげ忠男」氏。時代を象徴という感。貸本マンガの巻末の読者コーナーに垣間見る作者と読者の交流。現代ではありえない密度も、高度成長期の齎した”弊害”かもしれない。2017/06/25
内島菫
28
私には貸本という実体験もなく、また貸本マンガの個々の作品の中にも興味を引くものがないように思われてもいたため、本書の対象となっている世界はどちらかというと敬遠しがちであった。加えて、貸本マンガを単独のモノとして扱う歴史意識を欠いたマニア的な興味もなかった。が、著者の人となりをほんの少しではあるが知っていることも手伝って、自分が多少とも関わっている今のマンガの世界と過去の貸本マンガが地続きであるということを、本書の時代背景や貸本事情の描写から窺い知ることができた。それは自分の出自を知るという意味で興味深い。2016/12/20
akihiko810/アカウント移行中
12
53年から69年に存在した貸本漫画を論考し、昭和の風景をあぶりだすコラム論評。印象度B+ 著者は「ガロ」編集者で、貸本漫画史研究会会員らしい。貸本漫画についてのコラムだが、貸本漫画そのものの論考というより、貸本漫画を通じて昭和という時代を見る論評集といったところ。つげ(義春、忠男)、水木、さいとうたかを、白土三平と今や大御所(というか鬼籍に入られたかたもちらほらと)の貸本漫画を紹介する。つげ義春は、デビュー前の弟・忠男の下書き原稿を譲り受け、自分の作品として発表した(「手錠」)という話には驚いた。2021/04/06
bapaksejahtera
6
政治といえば反核反戦としか思い浮かばぬ幼稚な老年の貸本漫画評論集である。紙芝居論(テレビによって消滅したのではないとの分析は妥当)や少女漫画論などは読むべきところもあるが、手塚治虫批判(そのヒューマニズムは終始観念的空想的である由)は全く受け入れられない。著者はこれに代えて貸本漫画論で権力批判を繰り広げるのだが、そこにはどんな権力を打ち立てるのかの展望提示が無い。著者より前の世代の関係者、例えば加太こうじにはソヴィエト権力を樹立するという思想性があった。作者の思考レベルは昨今の朝日新聞論調と同様である。2020/09/11
じょっちゅん
3
貸本マンガという文化の一部始終を見届けた著者が、貸本マンガを筆頭に、貸本業界全体や貸本衰退後にブームとなる劇画などについて当時の世相との関わりを強く意識しながら論考しており、マンガ史のみならず、文化史を考える上においても重要な示唆を与えてくれる一冊。2017/06/04