内容説明
化学者としての専門知識を縦横無尽に駆使した本格ミステリ!九つに分類された可能性を検討し、真実を覆い隠す濃霧の如き謎の数々を解き明かせ。
著者等紹介
コニントン,J.J.[コニントン,J.J.] [Connington,J.J.]
1880‐1947。本名アルフレッド・ウォルター・スチュアート。スコットランド、グラスゴー生まれ。グラスゴー大学で科学を専攻し奨学金を得てロンドンの大学へ入学、同校で研究を続ける。1908年に刊行されたRecent Advances in Organic Chemistryは教科書として広く使用された。教授としてベルファーストのクイーンズ大学に勤務し、物理化学と放射線の講義を受け持つ。推理作家としては『或る豪邸主の死』(1926)でデビュー
渕上痩平[フチガミソウヘイ]
元外務省職員。海外ミステリ研究家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
スパシーバ@日日是決戦
94
B (2016年)<1928年> 二人の人間の考えられる死因が三つ(事故・自殺・殺人)のうちいずれかとすれば、九つの異なる組み合わせがある。出版当時は、「ストーリー展開が退屈」「「××の専門知識がないと解けない」「感情を排した、読者の感情を移入を拒絶するようなキャラクター」などの批評が少なからずあったらしいが、決してそんなことはござんせんよ! 「答え合わせ」で致命傷となる××を見逃したため、小生の推理はものの見事に外れたけどよかばい! なお、本作にはモデルとなった実在の事件(××事件-1910年)がある。2016/12/12
飛鳥栄司@がんサバイバー
20
「新青年」版の『九つの鍵』は抄訳でどこか脚色めいていたので、作品本来の姿を読めるのは嬉しい限りである。ある条件を9つに分類して、推理を進めていくのは、読者も探偵役と一緒に謎にアプローチしている感覚が読んでいて楽しい。推理して、新たな情報が出るたびに元の推理を捨てて推理し直すところは、コリン・デクスターのモース警部シリーズを彷彿とさせる。最終章の推理ノートは本格好きにはたまらないアイテムであり、C.デイリー・キングのオベリストシリーズを思い出させる。コニントンは本作を読まないと本当の良さは見えてこない。2017/07/11
やっす
19
名のみ知っていた幻の本格派コニントン初読み。冒頭の死体発見シーンに始まり、間伐入れずに起こる新たな事件、正体不明の密告者、更なる死体発見、探偵役二人によるディスカッションや暗号解読などなど。終始目まぐるしく事件が展開するので、飽きずに一気に読める。犯人は見当が付きやすく、さほど意外性はないけど、最後に示されるドリフィールド卿の推理の過程が明快で納得度が高く、充分な満足感が得られました。細部まで良く考えられた知的パズルの様な古典的ミステリの好編。来年には次の邦訳の予定もある様なのでそちらも楽しみです。2016/08/29
cinos
14
九つの解決が九つの多重解決だと思って読んだらそうではなかったので残念でした。最後のクリントン卿のノートが事件をよく分析されていて納得しました。ラストの出来事もすごく意外でした。古き良き本格ミステリはいいですね。2016/09/19
koo
6
初読み作家、タイトルからてっきり多重解決作品かと思いきや違いました(笑)2つの殺人事件の真相が自殺、他殺、事故の3パターン、組み合わせで9パターンあることを示し探偵役がロジカルに絞り込んでゆくスタイルは好感が持てますし最終章の推理ノートはバークリーの某作品を読んだ時の様な懐かしさがありました。反面事件描写やキャラ造形は平板で小説というより推理テキストを読んだ様な印象でしたし現代の読者が犯人予想を外すことはまずないでしょうが(笑)昔ながらの本格を楽しめました、こういうのでいいんです。2023/11/12