内容説明
真夏のアヴァンチュールが死を招く。果たして“彼女”は殺されたのか?荒涼たる湿地に消えた美女の謎。サスペンスの名手が仕掛ける鮮やかな逆転劇。
著者等紹介
ガーヴ,アンドリュウ[ガーヴ,アンドリュウ] [Garve,Andrew]
1908‐2001。本名ポール・ウィンタートン。別名にロジャー・バックス、ポール・ソマーズがある。英国レスターシャー生まれ。ロンドン大学経済学部を卒業後、「エコノミスト」の編集委員や「ロンドン・ニューズ・クロニクル」紙の記者を務める。第二次世界大戦中は特派員としてモスクワに滞在していた。1947年に記者を辞職し、本格的な作家活動を始める。創作活動は1930年代から始めており、記者時代にロジャー・バックス名義で発表したDeath Beneath Jerusalem(38)がミステリーのデビュー作(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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夜間飛行
40
この作品は初めのうち犯人の視点に立って書かれ、途中から警察側の視点に変わる。その換わり目は手品師の手の動きみたいに怪しげで、ちょっと欺されたような気分になるが、それも悪くない。二つの視点の「狭間」に謎があるというプロットの立て方は、(解説で似ていると指摘される)東野圭吾を読んだことのない私には新鮮だった。湿地、手紙、クルーザー、新聞、花束、花壇……すべての要素を注意深く組み合わせれば真相を見抜けるが、それには超人的な観察力を要するだろう。手掛りの出し方が不親切ではあるが、謎解きは理に適っていて納得できた。2014/04/11
みっぴー
31
ホラーっぽいタイトルですが、ミステリーでした。内容は、うーん、微妙。人物描写が淡々としていて、殺人者、探偵役、被害者、誰にも感情移入できませんでした。同作者の『ヒルダよ眠れ』もあまり印象に残る作品ではなかったので、もしかしたら相性の問題かもしれません。残念です。2017/08/08
イエローバード
16
主人公は女に目がなくて、結婚で一攫千金をもくろむハンサムな男。首尾よく資産家の娘との婚約にこぎつけたのはいいが、うっかり身ごもらせたうぶな娘に結婚を迫られ……。よくある話だが、無駄な部分がいっさいなく、主要登場人物がわずかに5人。しかもあっと驚く展開。直前に読んだ小説が登場人物百人でこてこての物語だったから、この潔さに感動。ノルウェーの優雅なビーチリゾート、陰鬱な英国の湿地……目に浮かぶような描写も素晴らしい。悪党も刑事もみんないい。著者の他の作品も絶対読むと決心した次第。2017/07/16
飛鳥栄司@がんサバイバー
9
これは超絶技巧。1発的なネタではあるが、このネタを無理なく読ませるのはガーヴならではだと思う。巻末の解説によれば、ガーヴの長編の翻訳はなんと42年ぶりだそうだ。これを機に再発掘して欲しい作家である。 作品の性質上、色々書くとネタバレになってしまうので、書けないのがもどかしい。本作の読みどころは、全体的な流れと終盤の転回(あえてこの漢字)である。サスペンス性というかドラマ性というか、バチッとはまる感じが読んでいてとても心地よい。読んでおかないと損をする作品であることは間違いない。そしてガーヴの再評価を。2013/10/11
koo
8
ガーヴのポケミスじゃない新訳が読めるなんて思ってもいませんでした。巻き込まれスリラーじゃなく倒叙形式から始まりますがアイラレヴィンの「死の接吻」を彷彿とさせる犯人の造形が秀逸、名解説の通りプロットは「メグストン計画」、犯人の仕掛けたトリックによるサプライズは「レアンダの英雄」に匹敵しますし後発例はありますが前例は思いつきません。解説者の「消える魔球」と言う表現は言い得て妙(笑)1966年作で250ページ足らずでこんな傑作を読めるとは思いませんでした。本格ファンにもこの作品はオススメです。2022/04/25