内容説明
無意識から意識へと飛翔する愛の白日夢!『黄金伝説』に呼び覚まされた薄幸の少女アンジェリックは…。ゾラが手繰り寄せた死の奇跡。
著者等紹介
小田光雄[オダミツオ]
1951年静岡県生まれ。早稲田大学卒業。出版社の経営に携わる
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
NAO
51
ルーゴン・マッカール叢書16巻。この一族を主人公に、近代化進むパリのさまざまな面を描き続けたゾラ。あまりにも醜悪な場面が多すぎるため、こういった夢のような話を書いて息抜きしたくなったのだろうか。結婚と子どもを持つということ。3組の親が、子どもに対して持つ考え方の、何という違い。悪の権化のようなシドニー夫人の娘が純白であるという、なんという皮肉。でも、だからこそ、彼女は長生きできなかったのだ。終始夢を見続けた彼女の生涯そのものが淡い夢だったかのようだ。2017/05/26
ラウリスタ~
20
これはもう擁護しようがないほどの駄作(一読者として)。ルーゴン・マッカール叢書の中に組み込む必然性は皆無だし、ピンク色の表紙をしたメロドラマも真っ青の爆笑モノの陳腐な恋バナと「いやよ私は聖女様みたく清純に生きるの」との間の全く感情移入できないアホみたいな葛藤。きわめつけは、ラスト、死にかけのヒロインに終油を塗りに来た司祭がキスをすると息を吹き返す。その息子である王子様と晴れて結婚式、教会をでたところでキスをした瞬間、ヒロインは息を引き取った・・・ばっかじゃねえの、誰に読ませる気だよ。ゾラはこの分野では…2017/04/28
きりぱい
6
叢書第16巻。珍しく薄い巻にちょっとほっと?する。ほっとしたにもかかわらず、その幕引きはもはや究極の幸せなのか、究極の不幸なのか・・。預け先を逃げ出し聖アニェス像の元で凍えていた孤児のアンジェリックは、聖女信仰に安らぎを見い出しながら、秘密の恋にも落ちてしまう。少女が貫く純潔な精神の行きつく果ては、恩寵の光が放つ白さでまぶしい。思えば、殉教者たちの迫害の有り様もきわどかった。一族とのつながりはどこかと思ったら、2巻で嫌らしげだったシドニー夫人が扱い軽くも登場。2011/04/28
ホレイシア
6
キリスト教というのは、何とも難儀な世界だのう(笑)。マッカール叢書の1冊として読むには物足りない感が残る。あと一番の文句は、訳がなってないっ。2011/01/21
Yoko Kakutani 角谷洋子/K
3
ゾラの小説の中でも特異な作品である。聖と俗、夢想と現実の相剋が迫力のある筆致で綴られている。Twitterでも指摘している人がいたのですが、私も、自然主義と形容されるゾラの小説には逆説的に幻想味も感じていたりしました。 本書ではそういう、ゾラのファンタジー的なものに対する感度の良さが随所に表れている。 終盤にかけて、主人公の少女の夢想への逃避の末に消耗していくさまには哀切なものがあった。 ボヴァリー夫人あたりと比べても面白いだろう。2021/05/10