内容説明
浅草六区の和製サムは女スリ。ミステリの可能性を拡げる匿名作家の傑作群。軽快なフットワークで下町を駆け抜けた日本最初の女性キャラクター・ミステリ。
著者等紹介
久山秀子[ヒサヤマヒデコ]
1905(明38)年、東京下谷生まれ。本名片山襄あるいは芳村升とも。別名久山千代子。横須賀の海軍工機学校で国語の教官を務めていたが、25(大14)年、『新青年』に『浮れている「隼」』を発表し、探偵小説界に入る。勤務先の関係から、筆名を女性の名前とし、長い間男性であることを隠していた。ジョンストン・マッカレーの「地下鉄サム」シリーズを種として、女スリ「隼お秀」が活躍する痛快な短編を37(昭12)年まで発表しつづけた。その後、文筆活動を休止していたが、戦後の55年になって「梅由兵衛捕物噺」を数編発表した。没年不詳
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感想・レビュー
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まゆき
1
1925年の発表作から「女スリ隼」シリーズをまとめた一冊(以下続刊?)。隼は名前が筆者のPNと同じ「久山秀子」。しかしその筆者は…という意外な内幕もあり。お話自体は他愛ないけれどコンパクトにまとまっていて全体的に洒落た感じです。「隼の解決」では当時の外国人問題も。当時こきおろされた作品と、その批評への公開反論作品も収録。2012/01/26
cogeleau
0
久山秀子は「隼のお秀」と呼ばれる女スリであり、何人もの手下を抱えている。浅草などの盛り場とか映画館、あるいは市電や地下鉄の人混みが稼ぎ場であった。大正末期からその行状記を探偵雑誌に掲載していたが、その作品集として出版されたのは昭和4年の日本探偵小説全集の1巻(浜尾四郎との合巻)だった。単行本でなかったのは、当時「円本」と称される「全集本」が大流行していたためと思われる。モダニスム文化の花咲く時期に、新感覚派的な表現と軽妙な語り口で、指先のトリックを駆使した小事件を片づけて行く心意気は痛快だった。☆☆☆2024/02/07