内容説明
『ボヌール・デ・ダム百貨店』の前史パリ高級アパルトマンの男と女が織りなす熾烈なセックス・ライフ!ゾラが覗いたブルジョワジーの生態。
著者等紹介
小田光雄[オダミツオ]
1951年静岡県生まれ。早稲田大学卒業。出版社の経営に携わる
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感想・レビュー
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NAO
54
ルーゴン・マッカール叢書10話では、前の暗く重い話から脱して、パリの下宿屋を舞台にした恋愛狂騒劇が繰り広げられる。玉の輿を求めて娘を売り込む母親。妻たちの家計に合わない出費に苦しめられる夫。詐欺まがいの結婚話に引っかかる男。そして、女中たちの不品行。パリを舞台とした群像劇は、狂おしく、悲喜こもごもで、まさに「ごった煮」。この騒ぎの中、それを楽しんでいるようにも見えながらも、主人公オクターヴはしっかりのし上がっていく。結局、よほど強い思いがないと、猥雑な都会で頭角を現すことなどできないということなのだろう。2016/11/29
兎乃
30
叢書再読マラソン第10巻。雑にいうと日本では"自然主義とは現実を赤裸々に描くもの"と解釈され変質し矮小されてしまったので、なんとなくゾラは見過ごされている気がする。叢書は、第1巻で物語の始まりにおける世界観の提示と今後4世代にわたる人物達の念入りな紹介、時間を反復横跳びしながら展開する各巻に それぞれ中心となる主人公を設置、外部記憶と内部記憶を巧みに絡ませ(繋げ)、かつ各巻が独立した小説として成立させている。独自性の深化とコミュニケーションといった"流れの秩序"に刮目し、客観性や構成力を基盤に描写の(→2014/03/21
ラウリスタ~
14
1882年、10巻、ボヌール・デ・ダムの一個前で連続している。「私たちは真っ当なブルジョワです」「破廉恥な労働者階級の輩とは違うのです」と言い張るブルジョワたちが陰では不倫、遺産争い、第二夫人、ありとあらゆる不品行に精を出す。一つのアパルトマンの中に物語を限定する。女中たちによる悪臭を放つ中庭を囲んでの井戸端会議が面白い。謹厳な裁判長どのが自分が孕ませた職人女に判決を下したり、妻から逃れる為に作った愛人との巣が今度は家庭的心労の種となったり。裁判長に孕まされた女中が一人でこっそり出産するシーンはグロい。2017/04/29
ろべると
9
後にボヌール・デ・ダム百貨店で成功するオクターヴ・ムーレが若い頃に住んでいたアパートメントには、家主一族をはじめさまざまな中産階級の一家が住んでおり、使用人たちも含めて大勢の人物が登場するのだが、まぁ彼等の色と欲がぶつかり合い絡み合っていき…、最後は題名の通りまさにごった煮と化して凄まじい様相を呈する。乱痴気騒ぎに明け暮れる主人達、それを猛烈にこきおろす女中達の溢れかえる活力。流石にここまで酷いとは思わないが、当時のパリ庶民の生態を活き活きと描いてみせるゾラによる一級の社会学的資料と言えるのではないか。2023/02/27
きりぱい
7
叢書第10巻。『ボヌール・デ・ダム百貨店』を先に読んでしまっていたので、そこの経営者になる前のオクターヴ・ムーレの印象に若干ショック。プラッサンからパリへ上京してきたオクターヴが住むことになった5階建ての建物は、見かけこそ風格があってブルジョア階級が住んでいるが、風紀に厳しい管理人をよそにその内実は腐敗の一路。なんという金への執着とためらいない姦通!まあ、ここに始まった訳ではなし、むしろ他の巻に比べたらおとなしい方なのだけど。ブルジョアの面々にみる虚飾の滑稽さもさることながら、女中たちのひどさよ。2011/06/08