出版社内容情報
柳沢 英輔[ヤナギサワ エイスケ]
著・文・その他
内容説明
「録音」が開く、聴覚の新たな地平。木々のざわめきに、都市の喧騒に、民族音楽の背後に、固体を伝う振動に、水中の音環境に、私たちは何を聞き取ることができるのか?実践と鑑賞を通じて、音の可能性を拡張する画期的音響文化論。
目次
第1章 フィールド・レコーディングとは何か
第2章 環境の響きを録る
第3章 音楽の響きを録る
第4章 聞こえない音を録る
第5章 音のフィールドワーク
第6章 録音の編集と作品化
付録
著者等紹介
柳沢英輔[ヤナギサワエイスケ]
東京都生まれ。京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科博士課程修了。博士(地域研究)。同志社大学文化情報学部助教を経て、京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科特任助教。主な研究対象は、ベトナム中部地域の金属打楽器ゴングをめぐる音の文化。著書に『ベトナムの大地にゴングが響く』(灯光舎、2019年、第37回田邉尚雄賞受賞。日経新聞、読売新聞、ミュージックマガジンなど書評、インタビュー掲載多数)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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しゅん
13
正にフィールドレコーディング入門というか、研究者・実践者としての著者が当該分野の遍歴と思想と具体的方法を入門者に示す。聴くことの入門書ともいえる。視界を介さない音の体験が個人の感性に刺激と知恵を与え、環境や社会に対する意識を変える。そのような変化を著者が信じており、かつ柔らかい言葉で読者を録音行為へ誘惑するという意味で、優れて政治的な書物。フィールドレコーディングを自分で実践したら、スタジオ録音の音楽(いわゆる商業音楽)の聴取、あるいは音を言葉で表す作業に、変化を及ぼしそう。2023/05/19
qoop
6
実践者個々が方法を模索し工夫して目的を果たして来たフィールド・レコーディング。目的次第で方法論も異なる訳で一概にまとめられないが、本書は多様な在り方に配慮しつつ、著者の実践を紹介して間口を広げようと書かれた好著。歴史・対象・方法・聴取を視野に入れながら自身のスタイルを模索する実践指南の書でもある。細かさとおおらかさを兼ね備えて筋道を定める仕方は、手法の違いに限らず参考になるのではないかと思わせられた。2022/08/17
KATSUOBUSHIMUSHI
2
筆者がフィールドレコーディングに関わっていく中で見てきたいろいろな側面を紹介した本。ただ音を録音しているだけというイメージだったのが、商業音楽、音楽にとどまらない芸術、学術の間に位置する行為で、その録音には「音楽」で表現できない多くの情報、製作者の意図、文脈が含まれているということを知った。あくまで筆者の経験を中心に書かれている印象ではあるが、この本を読むだけでも普段聞く音の印象が変わった気がするし、入門としてはちょうどいい深さの内容だった。身の回りの音や振動が持つ多様な側面に気付かせてくれる本でした。2022/10/25
窪
1
旅先で音を記録するということを少しばかりやっていたので、読んでみた。歴史や研究の紹介など人文的な内容のなかで、著者が体験した録音モニター中の深い没頭、世界が自分の中に溶け込むような描写はとても美しく、これを読めばレコーディングしたくなること間違いない。/自然・環境というと「癒し」などと結びつきやすいと思われるが、本書で紹介される取り組みの数々はもっと深い。ありふれた「自然の音」なんてなく、どんな音源にも録音者やその土地の文脈が入り込んでくる。その意識を持って、色々聞いたり、そして録ったりしてみたいと思う。2023/08/16
遠藤 悪
1
紹介されていたその「音楽」ではない音はYouTubeに上げられているものを幾つか傾聴した。こんな音に対する感覚が「音楽」を更新してきた。ケージの「4分33秒」とか。いい本だ。2023/07/17