内容説明
洞窟画からラクガキまで造形衝動の根源に迫る労作。さまざまな分野からの横断的探究。
目次
絵画は動物を描くことから始まった
洞窟という空間に秘められた謎―対談(1)田淵安一
チンパンジーの絵―対談(2)河合雅雄
残されていない「もの」を探る
人類誕生以来の空間と音とのつきあい―対談(3)橘秀樹
生命エネルギーを放出する絵―対談(4)中沢新一
ラクガキが人類最初の絵画
絵だけがすべてではない―対談(5)若林奮
魑魅魍魎が見えていた時代―対談(6)梅棹忠夫
脳は絵をどう描くか―対談(7)岩田誠
ヒトはいつから絵を描いたか―対談(8)片山一道
絵は見るためのものか―対談(9)前田常作・李禹煥
生きるための最尖端の武器―対談(10)木村重信
ヒトは洞窟の奥に何を見たのか
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やよひ
2
現代美術館で田窪恭治展を見て、テンションが上がって悩みに悩んで購入した一冊。人が絵を描くことの絵画理論を語る書と漠然と想像してましたが、違いました。人類に絵を描く行為が発生したことにまつわる対談集でした。類人猿学の先生、脳神経科の先生、はたまた実際の美術家まで、様々な専門家が専門分野に立脚した説を展開しています。どれにも適度に納得させられましたが、一番 印象的だったのは実際の美術家の絵画とその目的の部分です。二人の美術家の対談内容を読んで、以前から疑問に思っていたことに答えが出ました。2011/12/15
shimauma_man
1
アルタミラやラスコーなど先史時代の洞窟壁画から「ヒトはなぜ絵を描くのか」を様々な角度から考察していく。 画家、サル学者、音響工学者、宗教学者、彫刻家、民族学者・・・ やはり各々の専門分野によって絵に対するアプローチが全然違う。 中でも中沢伸一さんと片山一道さん(形質人類学者)の考えは非常に興味深かった。 また、「絵を描く習慣のない部族はいるが、踊りと音楽を持たない部族はいない」という事実は、より本書のタイトルの謎を深く遠い場所に追いやることに・・・ 2009/07/19
proget1022
1
結局「絵」に関しても「ヒト」に関してもその範疇でしか思考を展開できない論者たちの、くだらない興味関心からくる雑言を聞かされたという印象。中沢新一だけはスケールが違った事実は唯一の救い。タイトルの謎は人間で語り尽くせるものじゃない。洞窟画なんて明らかに導入程度の問題でしかない。中途半端に神性話をからめすぎだ。美術のケツの穴の小ささを思い知らされる本。2010/07/03
KimuraShinichi
0
読む前に「ヒトはなぜ絵を描くのか?」への答えとして期待していたのはどちらかというと自然科学や社会科学の立場からの法則性。この本はそういう本ではありません。まあ、違うだろうなぁと思いながらも書名の誘惑は強すぎました。読み終えたいま改めて考えると、もしほかの動物や知らない人が絵を描いてみせてくれたら警戒心を捨てて仲よくなれる気がします。「絵にも描けない美しさ」という言葉がありますが「言葉にしきれない好意や嫌悪」を伝える手段が絵であり、それを伝えたい気持ちが「絵を描きたい」という気持ち、なのかなと今は思えます。2017/02/25
aoyami
0
ヒトが類人猿だった頃の「描く」という行為を通して、行き詰まっている現代絵画がこれから辿るべき道を探るという主旨の本。洞窟画が何故描かれたかは想像の域を出ず、雲をつかむような「仮定」の列挙が続く対談だったけど、各専門家の仮説の中には、絵を描く立場から見ればおっと思うような部分もあった。2012/05/20