出版社内容情報
江戸に流れる時間はかくもつましく愛らしい。
まめに働き、生真面目で、だけど心はやわらかで……
かつての東京を生きた人々のささやかだけど豊かな暮らしを、気鋭の作家がみずみずしい筆致で描く珠玉の連作短編集。
市井の生活を丁寧に写し取った愛すべき十五編に加え、
描き下ろしコラムとおまけ漫画も沢山収録!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
天の川
52
おだやかで、しみじみと温かくて。季節感あふれる江戸の市井の人々のくらしと人情に浸れる一冊。町を振り売りが通る。それぞれの売り詞が響く。お月見、梅見、潮干狩り…季節の行事ごとは人々の心を華やがせる。煤払いや梅仕事、曝書も季節を感じさせる「すべきこと」だ。飢饉やはやり病、火事など、人々のくらしは決して安穏ではなかったであろうけれど、日々を楽しむ姿が心に沁みる。描くにあたっての筆者の細かなことへのこだわりや図書館のレファレンスサービスの優秀さも伺うことができた。2024/06/09
Roko
30
梅の土用干しと同じように、書物の土用干しをするのは知っていましたが、それを「曝書(ばくしょ)」と呼ぶのは初めて知りました。この本で主に描かれているのは町民の暮らしですけど、禄が少ない武士が庭で野菜を作っていたリ、副業として書物の引き写しをしていたりというのも、当時の風俗を知るうえで大事ですね。お豆腐も、油も、魚も、野菜も、たいていのものは担いで売り歩く「棒手ふり」で売りに来てくれるから、わざわざ遠くまで買い物に行かなくていいし。季節ごとに売り物も変わっていくし、今よりも買物は便利だったんじゃないかしら。2024/04/16
しましまこ
15
江戸の日常漫画、善き。2023/06/18
月音
10
「ちょっと江戸まで行ってきました。」なあんてね。蝉時雨を聞きつつ食べるところてん、粋でいなせな町火消しの男たち、師走は長屋のみんなで煤払い、梅の香りに春を感じて…。ほのぼのと陽だまりにやすらう心地の江戸の市井の暮らしを描いた連作短編漫画。細かい箇所まで考証が行き届いているが、説明的なナレーション・モノローグは一切なし(ミニコラムはあり)。ないとなると、そうした解説の類は物語を途切れさせ、停滞させていたと気づく。この物語は日当たりだけでなく、風通しもいいのだ。⇒続2025/01/07
hassy★
8
江戸初期?の街並みや食文化、暮らし向きがよくわかって面白かった。江戸時代から東京はちゃんと文化が繋がってる。失われた商いもあるけど、大体今もあるなぁなんてものが多かった。屋台で蕎麦が食べたいわ。2024/04/14