出版社内容情報
児玉さんはまるで詩のように 改行の多い話し方をする――
文学部部長にして唯一の部員である、完全無欠の文学少女・児玉まりあと、
有望なる部員候補・笛田くん。特殊で濃密な二人きりの文学部活動。
比喩・記号・語彙……文学の構成要素をテーマに、
孤高の才能が描く静寂と浮遊感、とびきりのポップ。
詩情あふれる台詞と画面、ミステリのように反転する物語。
近いようで遠い文学と漫画が、かつてないほど接近した奇跡の怪作!
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四井志郎の本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
トラシショウ。
42
「猫はカレーライスの様に冷たい・蝶の様に複雑で・劇場の様に人工的で・スターリン批判の様に甘く・地動説の様に儚く・猫の様に完璧」(児玉さんは1秒間に五回猫をたとえた)。読み友さんのつぶやきから。独特極まる感性の持ち主にして、文学部のたった一人の部員にして部長である児玉さん。彼女が「髪の長い美少女」に見える笛田くんと、彼を毎日「たとえ」や「しりとり」等を用いて「入部テスト」する児玉さんとのおかしな日常を描く。超ざっくり言ってしまうと「上野さんは不器用」文学版。また凄くクセの強い作風だなぁ(以下コメ欄に余談)。2019/04/25
三柴ゆよし
26
これはいい。タイトルの「児玉まりあ」から想起されるように(ボルヘスの妻の名はマリア・コダマ)きわめてボルヘス的なエクリチュールの時空を揺蕩いつつ、且つもろに文学をテーマとして扱いつつ、本篇では具体的な文学作品について、そしてなによりもボルヘスその人について一度も言及しないという迂遠な筆法を用いているのが上品だ。無粋をかえりみずに言えば、第二話「しりとりのきずな」の参考文献は、ブランキというよりむしろ「トレーン、ウクバール、オルビス・テルティウス」であって、この中心からの脱線と迂回が実に文学なのであった。2019/05/01
蛇の婿
24
本の本。なんだけれども、本の紹介とか本の感想とか本に関するエピソードでもなく、本の主題をテーマに本とは微妙に違う別の物語を展開する漫画。好きな人とそうでもない人がけっこう分かれるんではないかと思います。この本のおかげで、もしかしたらシュールレアリズムが私には理解できるかもしれない。そんな漫画。溶ける魚読んでみたいと思います。2021/06/26
akihiko810/アカウント移行中
22
文学部部長の児玉さんと笛田くんが文学の技術を題材にした会話をする「実験小説」風マンガ。 実験小説、ならぬ実験マンガ作品か。「文学を構成するのはなにか」というものを漫画作品に落とし込んで作品にしてしまった作品。実験マンガなので、面白い、というより不思議な味わい。2022/06/04
緋莢
20
「彼女の言葉は文学的である」、「児玉さんはまるで詩のように改行の多い話し方をする」文学部部長の児玉まりあ(しかし、部員は彼女ひとり)と、文学部に入部希望をしているが、もう一年近くも入部試験を繰り返し受けている男子・笛田、2人の物語。「たとえの練習」で、まりあは、1秒間に猫を5回たとえ、語彙力を鍛えるためにしりとりで会話、まりあの考えた新しい記号の効果を実験したりetc(続く 2019/06/08