内容説明
明治期最大のメディア『万朝報』を興し、内村鑑三から幸徳秋水・堺利彦までを擁し人々を熱狂させた傑物。闘犬・聯珠・撞球等趣味の達人。我国探偵小説の祖。幾多の顔を持つ涙香の闇多き生涯を追って桑港から江戸吉原までかけぬける傑作評伝。
目次
1 三幅対・三題噺のなかの黒岩周六(安芸国浄貞寺に三墓あり;土佐革命派の血筋;「土佐人士」から脱せよ;クラーク門下一期生黒岩四方之進;内村鑑三の原風景=札幌の自然;『万朝報』時代の内村鑑三;「理想団」の混沌、好ましきかな;非戦論者の訣別;『天人論』と『知人論』;自由民権運動を継ぐ亡命者の思想;幸徳秋水と岡繁樹;桑港から印度まで;兆民、涙香、鑑三、繁樹みな「操守する理想家」)
2 明治バベルの塔の怪人二十面相すなわち黒岩涙香(風太郎が解く涙香「前半生の闇黒」;涙香『無惨』が日本探偵小説の嚆矢;探偵小説とは群衆の観相なり;涙香の探偵小説的ライフ;黒岩涙香は怪人二十面相ならずや;さらに戎瓦戎、巌窟王、鉄仮面)
3 「吉原花魁」と表札を張った好漢=黒岩桃鶯(義母鈴木ますという「闇」;吉原と東照宮の御縁起;江戸の「粋」の担い手;九鬼周造vs黒岩涙香、何が「いき」かよ)
感想・レビュー
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午睡
1
黒岩涙香を語るに、いいだももほどふさわしい人はいないだろう。黒岩涙香といっても「黒い悪い子」と変換される現代だが、萬朝報という一大メディアを興し、ユゴーを翻訳し、五目並べまで発明した涙香は、まさしく明治の知的巨人であった。 その涙香の背景と業績、時代を語って余すところがない。余談を語っても、「乃木希典と東郷平八郎、この二軍人は戦士を遂げなかったので靖国神社には祀られませんでしたが、軍神として乃木神社、東郷神社に祀られ、神格化されるにいたりました」と目から鱗の語り口。さすがリブロポート。いい本を出していた。2016/08/31