出版社内容情報
大量出没と人身事故の増加でマスコミを騒がせるツキノワグマ。背景では何が起こっているのか? 著者が大切にしているのは「自分の眼で見て考える」こと。
クマの棲む山岳から里山まで丹念に調べ歩き、クマと人間との関係を読み解いていきます。「怖い」だけでは終わらせず、クマという生き物を知る面白さを考える一冊です。
内容説明
突然の大量出没ツキノワグマに何が起きてる?「クマは怖い」で終わらせない。自分の足で調べ歩いて、そのむこう側に見えてきたものは…
目次
第1章 秋田県で何が起こっていたのか
第2章 ツキノワグマとの出会い
第3章 ツキノワグマの生活の全体像
第4章 クマ狩りという文化
第5章 再び、秋田県の現場で考える
第6章 人とクマとの関係
第7章 長期的な視点では、何ができるか
著者等紹介
永幡嘉之[ナガハタヨシユキ]
自然写真家・著述家。1973年兵庫県生まれ、信州大学大学院農学研究科修了。山形県を拠点に動植物の調査・撮影を行う。ライフワークは世界のブナの森の動植物を調べることと、里山の歴史を読み解くこと。里山の自然環境や文化を次世代に残すことに、長年取り組む(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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- 評価
稲岡慶郎の本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
AICHAN
33
図書館本。昆虫研究者の著者が、昨年、東北でクマが人里に多数現れるようになって調査を開始した。著者は山形在住で、山形では人里に出てくるクマ(ツキノワグマ)は例年とほとんど変わらないのに、隣県の秋田では急増していた。人里に接近してくるヒグマを北海道の研究者はをアーバンベアと呼んだが、著者はいまひとつ納得できなかった。著者はクマの出そうな場所へ夜のうちに出向き、早朝から監視する。類推できたのは、山の木の実が少ない年は、子グマを連れたメスがオスから退避するため人里に出てくるのではないかということだった。2024/11/03
まるぷー
28
2023年はツキノワグマによる人身事故が多発した秋田県のクマ事情を考察。人里に出没件数が増加し、イネやソバの実を食害するようになった。しかも、親子のクマが複数のペアで人にも怯えない状況であると。山でのブナなどのドングリの凶作だけが原因でない。不可逆な森林開発によるクマの環境収容力の低下により、雄グマを回避した母クマとその子グマが多いということに納得した。2024年にツキノワグマは指定管理鳥獣になった。クマはイノシシと違い繁殖力が低いため駆除の仕方によっては嘗てのオオカミの運命を辿るのではないかと懸念する。2024/11/24
日・月
18
先月の発行本。シカは確かに増えたようですがクマは?動植物の多様性は失われつつあり、個体数も減少傾向であるのに人里に頻繁に現れる…この要因を実地調査をライフワークとする著者が読み解きます。ブナ・ミズナラ・コナラのドングリ類が重なって大凶作になったことや、母子クマが、子殺しをするオスが夜間に徘徊するのを避け、朝になってから危険性の少ない人里に現れることなど、納得できる具体的な検証が示されます。ドングリ類などの植物が、異常気象ではなく、自ら天敵の増加を阻むために数年に一度凶作をおこすというのが興味深かったです。2024/11/16
いっしー
12
現地を長年観察した上でのツキノワグマに対する考察。 新たな発見は2つ。1つ目は、越冬前にヒメコマツの樹皮を剥いで出てきた松脂を舐めて便を止め、翌春に有毒のミズバショウやザゼンソウを食べてわざと腹を下し排便すること。その最初の便は乾いてかなり硬いこと。2つ目は、親子グマの母親が駆除され、子グマのみが残ると、子グマは山にいるオスを避けようと人の生活圏を中心に暮らすようになる可能性があること。つまり、有害駆除による捕獲圧が逆に人里に出てくるクマを作り出す可能性があること。実に学びの多い一冊である。 2024/12/11
れい
8
【図書館】共生という言葉は美化でしか無いのかとショックを受ける。駆除される個体数も2000頭を超えるとなると、人間に置き換えたら恐ろしくなる。人の都合で殺すことが正しいのかと言い出すと、美化寄りになっていく。できるだけ殺さずにと考えるなら、森林の面積を計画的に管理するべきだとのこと。確かに。駆除されるのは子連れの雌が多く、子どもだけで越冬しようとするから、餌を比較的得やすい人里へ降りてきやすくなる。なるほど。雄が増えると子連れの雌は雄を避けようとして人里に降りやすくなる。政治の力も必要だな。2024/12/11
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