出版社内容情報
二一世紀労働法の課題と展望
日本の労働者権・労働条件の発展すべき方向の探求
労働者は「市民」であり、市民としての労働者が、その個々の自己決定に基づいて生き生きと主体的に参加するなかで、民主的な社会が作り上げられていくという一貫した思いを基に、これまでの労働法の発展を振り返り、今後の展望を提示する。
◎内容紹介
著作集最後となる第12巻は、労働法について多少長期的展望にたった論述と労働条件のあり方に関する論文を収録した。
最初にドイツと日本の労働者権・労働条件を比較した『ゆとり社会の条件』(一九九二年)を置いたのは、ドイツ・モデルといわれるすぐれた労働者権・労働条件を実現していた当時のドイツは、日本の労働者権・労働条件の発展すべき方向を示す意味をもつと考えたからである。その後、ドイツ労働法そのものが東西ドイツ統一やグローバル化・EU化、デジタル化のなかで相当変化したので、その一端を示す論文を収録した。
ドイツ労働法は、その後も相当程度変化している(桑村裕美子「フィールドアイ?~?」日本労働研究雑誌七七〇~七七二号〈二〇二四年〉、和田肇「ドイツ・ストライキ法における労働協約中心主義とその変異」労働法律旬報二九六〇号〈二〇二四年〉参照)。ドイツは日本と産業構造・就業構造が似ているので比較対象として適切であるが、人々の働き方には現在なお大きな差異が存在すると指摘されている(田中洋子編著『エッセンシャルワーカー』〈二〇二三年、旬報社〉二六頁以下参照)。ドイツ・モデルは揺れ動いているが、なおモデルとしての地位を保っているということであろう。
本巻には、さらに、労働条件のあり方に関する諸論文、すなわち、転勤問題、年休問題、高年齢者雇用安定法の適用問題、企業年金の引き下げ問題に関する論文を収録した。いずれも、長期的視野にたった労働者の働き方や退職後の生活にかかわるので、ここに含めることにした。また、少子高齢化のなかで今後より大きな政策課題となるであろう外国人労働者問題に関する論文を収録した。
そのうえで、「二一世紀労働法」により直接的な関連をもつ論文等を収録した。まず、「二一世紀」というタームのついた一つの論文と一つの講演録を収録した。前者は、それまでの労働法の発展を振り返って考えられる今後の課題を論じたものであり、後者は、より長期的視野にたった、私の予測を含めた展望を述べたものである。
最後に、二一世紀労働法を形成する主体の問題を広い意味における労働者代表のあり方という角度から論じた論文、そして、あるべき労働者像と労働運動のあり方を展望した講演録を置いて、本巻の締めくくりとした。それは、いうまでもなく本著作集全体の締めくくりでもある。
【目次】
◎詳細目次
刊行にあたって
本巻はしがき
Ⅰ ドイツと日本
ゆとり社会の条件――日本とドイツの労働者権[一九九二年]
はしがき
序章
第1章 労働条件決定のしくみ
一 労働者保護法の特徴と水準
二 労働組合と労働協約の役割
三 従業員代表委員会と経営協定
四 企業段階の共同決定
第2章 採 用
一 採用自由の制限
二 採用内定
三 試用期間
第3章 配置転換
一 日本の実態と理論
二 ドイツの状況
第4章 労働時間
一 所定労働時間
二 休日
三 閉店時間法
四 時間外労働
五 休憩時間と休息時間
六 女子・年少者の夜間労働等の制限・禁止
七 労働時間の弾力化
第5章 休 暇
一 年次有給休暇
二 病気休暇制度
三 有給の職務免除
第6章 賃 金
一 ドイツの賃金水準
二 賃金の決定方法
三 ボーナスをめぐる問題
四 労務不提供と賃金
第7章 職場における自由と平等
一 均等待遇
二 企業内における表現活動
三 懲戒処分
第8章 男女平等と母性保護
一 職場における男女平等の原則
二 女子保護規定
三 育児休業制度
第9章 解雇制限
一 解雇に対する法的規制
二 解雇予告(解約告知)期間
三 解雇事由の制限
四 即時解雇(非常解雇)
五 解雇訴訟
六 大量解雇にあたっての解雇制限
第10章 不安定雇用
一 期間を限定した雇用
二 パートタイム労働
三 派遣労働
第11章 労働裁判
一 労働事件と裁判所制度
二 労働裁判の実情
終章
ドイツ労働法の弾力化論[一九九三、九六年]
一 弾力化論の展開過程と本稿の目的
二 労働法「弾力化」の意義
三 弾力化論の背景
四 弾力化論の論拠
1 労働法体系の硬直性
2 失業労働者の保護
3 労働者の従属性の相対化
4 労働者のための弾力化
五 法的規整の緩和
1 問題の所在
2 規整の内容的緩和
(1) 人員整理の問題
(2) 労働条件内容に関する規整緩和
(3) 雇用・就業形態の多様化
3 集団的・個別的同意による法律からの逸脱
(1) 法律と労働協約
(2) 法律と経営協定
4 弾力化論と判例
5 小 括
六 労働条件決定システムの転換
1 問題の所在
2 労働協約と経営協定
(1) 現行法上の原則
(2) 労働協約自体による弾力化の現状
(3) 開放条項
(4) 労働協約からの逃避
(5) 法律にもとづく「開放条項」
3 労働契約による弾力化
(1) 有利原



