出版社内容情報
大飯原発運転差止めの判決を言い渡した当時の裁判長が、最新の地震観測結果、科学的知見から明らかな原発の危険性をもとに、必ず起こる南海トラフ巨大地震でも伊方原発は安全だという四国電力の主張、それを認めた広島高裁判決の問題点を語る。
目次
第1章 原発の本質とわが国の原発の問題点(原発の本質;わが国の原発の問題点)
第2章 南海トラフ地震181ガル(震度五弱)問題(問題の所在;伊方原発新規仮処分について;新規仮処分広島高裁決定について;裁判官はなぜかくも不公平て無責任なのか)
第3章 原発回帰と敵基地攻撃能力(原発回帰;敵基地攻撃能力;法治主義と法の支配)
著者等紹介
樋口英明[ヒグチヒデアキ]
1952年生まれ。三重県出身。司法修習第三五期。福岡・静岡・名古屋等の地裁・家裁等の判事補・判事を経て2006年4月より大阪高裁判事、09年4月より名古屋地家裁半田支部長、12年4月より福井地裁判事部総括判事を歴任。17年8月、名古屋家裁部総括判事で定年退官。2014年5月21日、関西電力大飯原発3・4号機の運転差止めを命じる判決を下した。さらに15年4月14日、原発周辺地域の住民ら九人の申立てを認め、関西電力高浜原発3・4号機の再稼働差止めの仮処分決定を出した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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たまきら
41
「最高裁はここまで堕してしまったのか」という嘆きの言葉から始まる原発を止めた判事による原発懸念本です。大変わかりやすく原発推進の問題を指摘しているだけでなく、今後どのようにエネルギーを「民主化」していけるかの提案もされています。短く、無駄なくまとめられた内容に感激しました。あきらめずともに声をあげていきたいー強く思います。2023/10/24
読特
40
北海道胆振東部、熊本地震は重力加速度1700ガル。650ガル超えはこの20年で30回。マグニチュード9と予測される南海トラフ地震のとき、伊方原発で起きる揺れはわずか181ガルと電力会社は想定。広島高裁は住民側差止申し立てを棄却。裁判官は何を判断したのか。…福島原発国賠訴訟で住民側請求を棄却した最高裁判事。退官後は、東京電力と関係の深い法律事務所に入所。我が身の可愛さ。国土など所詮その程度。311のとき、壊滅を救った数々の奇跡。もう一度、それは望めない。いつか住めなくなるこの列島。それは遠い未来ではない。2024/09/11
二人娘の父
12
2014年、大飯原発3・4号機の運転差止め判決をくだした元裁判官が、岸田政権「原発回帰」政策を明快に批判する。発生が確実視される南海トラフ地震。地元住民による伊方原発の運転差止め訴訟の様子が紹介される。裁判で電力会社が主張した「南海トラフ地震が起き、伊方原発を直撃しても181ガルを超えることはない」には驚く。東日本大震災では東京・新宿でも202ガルと計測されたにもかかわらず。電力会社と司法界が、いまだに「安全神話」にとらわれている事実を、法曹界の最前線にいた著者ならではの視点で明らかにする快作。2023/08/29
青雲空
7
今、最も読まれるべき本。筆者は終章で「2023年5月5日石川県珠洲市で震度6強の地震がありました。震源は、能登半島の先端部で、まさに2003年に凍結された珠洲原子力発電所の立地予定地付近でした。<中略>珠洲市の地震は自然界からの最後の警告かもしれないのです。」と記している。 今年元旦、我々は再度の警告を受けたのだが、日本政府はまたその警告を無視しようとしている。2024/01/15
小鳥遊 和
5
『私が原発を止めた理由』(2021)の著者が、日本の原発の問題点を総説した貴重な書。その立論は、1.原発の過酷事故のもたらす被害は極めて甚大で、広範囲の人格権侵害をもたらす。2.それ故に原発には高度の安全性が要求される。3.地震大国日本において原発に高度の安全性が要求されるということは原発に高度の耐震性が要求されるということにほかならない。4.しかし、わが国の原発の耐震性は極めて低く、それを正当化できる科学的根拠はない。5.よって、原発の運転は許されない。ーーというもの。説得力抜群。文章も読みやすい。2023/12/03