内容説明
「空間‐社会弁証法」視角による分析。現在の日本が陥る経済・人口・空間の縮小・衰退との関係において、現代の、そしてこれからの住まいと仕事の地理学を見つめる。
目次
住まいと仕事の地理学へ
住所の歴史学
都市から都市圏へ
新中間層と理想の住まい
住宅政策の誕生から戦時体制へ
戦後住宅政策の始まり
向都離村と集団就職の時代
多産少子世代のライフコースと郊外化
安定成長期・低成長期の非大都市圏
戦後住宅政策の変質
間接雇用がもたらすリスク
少産少死世代の都市社会地理
地方創生の政治経済学
著者等紹介
中澤高志[ナカザワタカシ]
明治大学経営学部教授。東京大学総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)東京大学。大分大学経済学部准教授、明治大学経営学部准教授を経て現職。専門は経済地理学、都市地理学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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鵐窟庵
8
労働と生活に関する地理学を、都市計画、都市史、住宅政策、経済学から総合的に分析し、空間弁証法と称される手法を展開している。日本の近代化に合わせた都市化や経済成長から労働人口の推移、それに伴う生活環境や都市計画の変化などを戦前から戦後にかけて、多くの統計資料から分析している。レッチワース等イギリスの近代都市計画の影響を受けて、日本の郊外住宅地が始まり、戦後ニュータウン、そして近年人口減による縮退都市と都市再生まで、広く時代を俯瞰しながら、具体的な都市空間が描かれ、当時の人々の労働や生活が鮮明に浮かび上がる。2020/06/18
jackbdc
3
興味深い視点。住まいや仕事は人の生き方や幸せと深い関係がある。デフォルト然とした大都市圏に住むサラリーマンという形態も全く普遍的ではない。都市化自体に法則性があっても環境要因に制約条件や変動要素がある。今後も少しずつ形を変え続けていくのだろう。印象に残った点3つ、1.江戸:都市としての特異性が際立っているため旧き良きモノという文脈で引用するのは無理がありそう。2.GPSデータ:分析結果を良き住まい方、生き方の研究に活用できるだろうか興味がある。3.兼業農家:農地や地縁は制約条件か資源か?視点によるだろう。2021/06/13
れどれ
1
国家から身体まで、自在にスケールを拡縮できる地理学の強みを再認識した。時代ごとの人口の増減、その地理的移動、住宅の間取り、都市の仕組み、企業を統制する法令といった事実関係が常に動態的に語られ、一見関連なさそうな事象がドンドン紐づけられていく。とはいえそれらの因果関係については慎重で、そうそう断言はせず、考察の範囲にとどめている。論理と理論の扱いがおみごと。2021/06/06
白虎
1
近代以降の人口移動を定量的に、住まいに関する政策・動向を具に追った一冊 フィールドワークやインタビューに基づいた生々しい記載もあり、まさにディシプリンの特性がフルに発揮されている 現実がわかり始めてしまった今、読めて良かったと本当に思う。 最終章では海外からの高度人材導入と移民受入の二枚舌に触れられ、日本のみならず世界で広がるエスニシティの問題に無力感を抱いてしまった2021/05/23
Tanakaji
1
住居と労働との関係。田園都市構想ラクーナの3つの磁石による都市と農村の間にある人民はどこへ行くのか?我々はこの問いの答えを探し続けているのか?戦後の高度経済成長、団塊ジュニア、地方創生へと、都市への人口集中と周辺へのスプロール化が繰り返される。この書が書かれた後にコロナがもたらした三密回避、地方への転出はどうなるのか?仮想空間は新たな住まいと仕事の関係を築くのか?この関係の過程を踏まえて考えたい。2021/04/13