内容説明
アイドルを動員せよ!陸海軍慰問雑誌のグラビアには、美貌のアイドルたちの輝く笑顔が写し出されていた。原節子、高峰秀子、李香蘭らが結んだ戦地と銃後の絆とは。今、明かされる戦争のもうひとつの真実。
目次
第1章 元祖アイドルと幻の慰問雑誌(ムーラン・ルージュの可憐なセンター・明日待子と兵士ファンたち;子役からセンターに躍り出る ほか)
第2章 慰問雑誌発行の背景(軍部の慰問戦略;恤兵部とは何か? ほか)
第3章 新体制運動とアイドル像の変容(「皇紀二千六百年記念号」は大女優一人;主役は街の、村の、美形へとシフトチェンジ ほか)
第4章 戦場に飛び出したアイドルたち(誰でも、戦地慰問に行けた;慰問の実態はどうなっていたのだろう ほか)
第5章 慰問雑誌の終焉とアイドルのラストステージ(終戦間際の慰問雑誌とアイドル像;漫画ルポが映し出す終戦前年の撮影所 ほか)
著者等紹介
押田信子[オシダノブコ]
横浜市立大学大学院共同研究員、昭和女子大学現代ビジネス研究所研究員。出版社勤務を経てフリー編集者として活動。2008年上智大学大学院文学研究科新聞学専攻修士課程修了、2014年横浜市立大学大学院都市社会文化研究科博士課程単位取得退学。メディア史、歴史社会学、大衆文化研究(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 2件/全2件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
へくとぱすかる
52
戦争中に有名女優・歌手をグラビアに載せた雑誌を、前線への慰問用に軍部が作らせていたとは意外に思える。戦争遂行のために女性の魅力を利用した一方で、国内では少しの娯楽すら奪われていた。当時の有名人の言動を批判するのはたやすいが、それなりに葛藤のあった人もいただろう。女性目線からの当時の事実を教訓として、二度とこんな時代を繰り返さないようにしたいものだ。2018/12/27
おかむら
37
戦地の兵隊に送られた慰問雑誌の研究本。海軍のは文藝春秋の子会社、陸軍のは講談社が作ってたそう。軍の恤兵(じゅっぺい)部が管轄。「恤兵」なんて字はじめて見たよ! 国民からの寄付で兵士の慰問をすることだそう。国内の雑誌が検閲統制が進みどんどんしょぼくなってく中、慰問雑誌は終戦間際までグラビアアイドルがにっこり微笑む。ただアイドルといっても女優や歌手だけでなく妙齢の芸者さんとか女流作家が入ってるところが、現代から見るとアレレ?となります。アイドルかどうかはともかく労作。戦地で読んだ側のインタビューも欲しかった。2016/09/16
遊々亭おさる
18
「贅沢は敵だ」の号令のもと、日本国内では娯楽に飢えていた激動の戦争の時代に田中絹代・高峰秀子・李香蘭ら時代を経ても色褪せることなき美貌を誇るアイドルたちがグラビアで笑顔を振りまき、また実際に砲弾が飛び交う戦地へ慰問に出掛け、兵士を慰め励まし続けた女たちの銃後の戦争の記録を慰問雑誌から丹念に追いかけた一冊。ここで扱われているのは広義の意味でのアイドルだけど、ファンが求める女性像を体現化し演じるというアイドルの本質がよく分かる本。現代もアイドルが政治に利用されたとき、戦争の時代へ舵を取り始める予兆となるかも。2016/11/09
keroppi
15
日中戦争時に発刊された慰問雑誌があった事を、この本で初めて知った。グラビアページで微笑むアイドル達。戦場で兵士達は、この微笑みに一時の救いを得たのだろうか。死に向かう兵士達の高峰秀子に宛てた手紙は、悲しすぎる。2016/08/14
今庄和恵@マチカドホケン室コネクトロン
13
そうか、アイドルというのは望まれる役割をする人のことなのだな。役割というからには当然満足させるレベルでなくてはいけないので、どんな極限状態にあっても基準値に達していないものでは用をなさないということ。地獄の黙示録でプレイガールたちの慰問光景があったけど、戦地にで向かされたアイドルたちにとっても地獄だったのだな。2016/07/12