内容説明
日本の刑事裁判の有罪率が九九.九%を超えることはあまり知られていない。現役弁護士が冤罪の「カラクリ」に迫る。自身がひとりの弁護士としてかかわって来た「身近な冤罪事件」を取り上げた。
目次
第1部 冤罪の現場(地下鉄半蔵門線で間違えられた男;「浅草四号」事件;奇妙な同級生の事件;「起訴前弁護活動」の一事例;寿司店の放火事件と虚偽自白;外国人風の男;痴漢に間違われた予備校生;はめられた男)
第2部 なぜ冤罪がうまれるのか―日本の刑事手続(捜査;公訴の提起;公判手続;証拠;第一審判決;控訴審;上告審;再審制度;改正刑事訴訟法)
著者等紹介
今村核[イマムラカク]
1962年生まれ。東京大学法学部卒業、1992年弁護士登録(第二東京弁護士会所属)。冤罪事件、労働事件のほか、群馬司法書士会事件、保土ヶ谷放置死事件などを担当。現在、自由法曹団司法問題委員会委員長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しいたけ
92
ジミニー・クリケットはピノキオの良心だ。文字通り虫けらほどの良心によって人は人でいられる。鼻が伸びたら恥ずかしい、創造主であるゼペットを悲しませたくないとの気持ちを持つことができる。この本にある冤罪は私の極めて身近な所にあった。だが私には罪なき人を貶めた近くにいる悪魔を見分けることができない。良心を持たない彼らの鼻は伸びることがない。勘違いや思い込みで証言してしまった人達のことを言っているのではない。明らかな嘘を重ねる警察のことを言っている。その醜悪な魂が終わりを迎えるとき、必ずや刑場に立たされるはずだ。2017/01/23
アキ
12
有罪率が99.9%を超える日本の刑事裁判で「冤罪弁護士」の異名を持つ今村核氏。自身が関わった「身近な冤罪事件」を例に明らかにする、司法・検察・警察による冤罪の「カラクリ」。法律を学ぶ人の求めにも十分応える詳しい解説に、専門とする分野ではどこまでも誠実でいようとする真の「専門家」の姿を見るようです。NHKドキュメンタリーでは語られていただろう、経済的には成り立たない「冤罪弁護」の世界、自身の苦悩と苦難の道をこの本では一切語らないところに、実直さと「清貧」の名にふさわしい清々しさを印象付けた読後でした。2017/01/20
がんちゃん
2
NHKでたまたま見た番組にいたく感銘し、すぐに本書を読んでみた。一番に感じるのは社会正義とは何かということ。それぞれの立場があるのは分かる。しかしそれぞれが社会正義の実現という目的に向かって動くのではなく、自分の名誉や地位、給料、出世、怠慢のために動いたとしたら社会正義の実現など不可能。なぜ冤罪が発生するのか、その問題点を探ると同時に、まったくお金にならない冤罪弁護を引き受けて無罪を勝ち取る(勝ち取れないこともある)弁護士がいるということに、まさ社会正義の実現という目的に対する救いのようなものを感じる。2016/12/04
やん
1
NHKのドキュメンタリ「ブレイブ」に出ていた弁護士さんの著書。具体的な事例を元に、冤罪に至るケースをいくつかの類型に分けて紹介している。重大事件の冤罪は比較的よく知られているが、重大事件ではないケースでの冤罪はもしかしてとても多いのかもしれない。警察や司法に対しては、最善を望みつつも最悪に備えることが大切かもしれないと感じた。2018/07/03
まな☆てぃ
1
昨年、裁判を何度も傍聴する機会があったことで裁判そのものに対する興味が沸いていたところに、たまたまNHKの番組を見てこの弁護士さんの著書を読んでみたくなり、図書館にて。裁判て本当に大変だから、諦めて、やってもいない罪を認めて楽になりたい、て思わせてしまうやり方もどうなのかと。時代に合ったやり方や法改正が必要なんだろうけれども、一筋縄ではいかないんでしょうね。。。2017/04/29