内容説明
冬の閉ざされた山小屋の一室で、初夏の緑が瑞々しい登山道で、山の怪は突如として牙を剥く。遺された無念の思いが、美しさに目を奪われた人々の心の隙に入り込む。登山者を異界へと導く「山」の霊気に満ちた怪異譚。
目次
五号室
隧道
幻惑の尾根
異臭
呼ぶ声
リフト
豹変の山
赤い靴
スノーシュー
ピッケル
ツェルト
噂の公園
境界線
猫の山
鹿乃牧温泉
終焉の山
仙人の山
古の道
息子
著者等紹介
安曇潤平[アズミジュンペイ]
1958年、東京都生まれ。サイト「北アルプスの風」主宰。サイト内で怪談作品を発表、2004年に怪談専門誌『幽』で「山の霊異記」連載開始。山の怪談の第一人者として活動の場を広げている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かおりんご
43
2作目をすっ飛ばしての3作目。今回は怖い話もあったけれど、不思議な話が多かった気がします。作者自身の話だけではなく、他の方の体験談もあるようなのですが、一人称で書かれているので区別しづらいです。山行きは、一人じゃ怖そうだとまたしても思いました。2015/11/01
HANA
38
山に特化した実話怪談集三冊目。というより明らかに創作とわかる方向にシフトしているような…このシリーズ。特に最後の方「終焉の山」とか「千人の山」は明らかにいい話に持っていこうとしているように思える。ただ怪談としてはあまり怖くはないのだが、この人の作品を読んでいると、ふと山道で見た春の野花とか登りながら嗅いだ草いきれだとかを思い出してしまい、また山に登ってみたくなる。山を愛しているのが文章から伝わってくるのかなあ。一度この著者の書いた山岳紀行文とかを読んでみたくなった。2013/07/13
ネムコ
36
山の空気感たっぷりの実話怪談集。「豹変の山」はいきなり人が変わってしまう怖さ。「猫の山」「鹿乃牧温泉」「仙人の山」など動物のお話も多かった。基本作者が体験したことだと思っていたのに「実を言えばこの本の中にも自分のの体験談はほとんどないのである」とあとがきにあって、何~!と。しかし同じあとがきで、単独行のテントで外から伸びた手に両足を捕まれ引きずられる恐怖体験をしたのに「おめえにつきあっている暇はねえんだよ。とにかく眠らなきゃいけないんだ。頼むからほっといてくれよ!」って一喝、霊に謝られた話は笑った。2017/03/07
ラルル
34
山の怪談ですが、小説風で各話登山の話が大半。怪談部分はチョロっとだけです。山の描写は退屈だったり面白かったりですが、気になってしまった著者の喫煙マナー。年齢的にマナーを考えて吸う事が難しいのかもしれませんが、登山の美しい情景を想像している所にタバコの煙が漂って来ると思わず「ぐぅ…」と唸ってします。吸う人にとっては気にならないんだろうな…2017/01/31
まるぷー
28
読み友さんからの紹介本。著者及び著者の山友さんが体験した山に纏わる怪談や不思議な体験談を21の短編で綴られている。全体的にもっと、背筋が凍りつくような恐い話の連続かと思って読み進めていたがそれほどでもない。山の神秘というか、人工物や文明から隔絶された山中ではこんなこともあるのかなって実感した。「五号室」「隧道」「豹変の山」は少し怖かったけど、「古の山」「息子」はほんわか感もあった。あとがきの霊に足を引っ張られ、「お前に付き合っている暇はねぇんだよ」霊は「悪かったな」ほんまかいなとともに笑えた。2017/08/15
-
- 和書
- 天人女房