内容説明
1960年代初頭、パリのブルー通り。11歳の少年モモは母の顔も知らず、父からも愛されずに育った。そんな笑顔も知らないモモに、愛情をそそいだのは孤独な老人イブラヒムだった。そんなある日、父親がわずかな持ち金と置き手紙を残し、家を出ていく…。
著者等紹介
シュミット,エリック=エマニュエル[シュミット,エリックエマニュエル][Schmitt,Eric‐Emmanuel]
1960年、フランス・リオン生まれ。91年に劇作家となり、小説も書き始める
番由美子[バンユミコ]
1975年、レバノン生まれ。東京大学文学部卒。02年よりパリ第四大学ESIT翻訳科在籍。現在ロンドン在住
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感想・レビュー
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tomoko
38
読友さんのレビューに魅かれて♪ ユダヤ人のモモ(11歳の少年)がイスラム教徒のイブラヒムおじさんと出会うことで、心を開き成長していく物語。〝幸せだから笑うんじゃない、笑うから幸せになるんだよ〟などなど、コーランを信じるというおじさんの言葉は、どれも哲学的だ。モモは、愛してくれなかった父、幼い頃に出て行った母のこともだんだんと許せるようになる。60年代のフランス、古いお店が並ぶ風景が浮かぶ。映画にもなっているのか。ちょっと観てみたい。2018/07/13
空猫
25
『ノアの子』から2冊目のシュミット作。今回も少年の成長物語。そしてイスラムとユダヤ、ナチスの黒い影があります。11才のモモは父親と2人での愛情のない生活。お小遣いを貯めるため食料品店で万引きを繰り返す。店主のおじさんはそれを知りながら何も咎めない。やがて少しづつ交流が生まれ…。生きる上でモデルとなり、許してくれ、居場所を与えてくれる大人はやはり必要ですね。何よりも、…十一歳のある日、僕はブタを割って、売春婦を買いに行ったーこの冒頭の一文にやられました。映画化されているそうなのでそちらも観たいところ。 2018/06/12
barcarola
6
イブラヒムおじさんの言葉が一々響いてくる。「ゆっくり生きる、これが幸せの秘訣なのさ」「モモ、お前さんはわしのためじゃなく、自分のために泣いているんだよ」……。100ページ強の短い話なのだが、それ以上の読後の満足感。2023/06/11
Apollo
1
ゆっくり生きているイブラヒムおじさんと、両親からの愛はもらえず孤独なモモ少年の2人が寄り添って支え合う様は、普遍的に美しく優しい姿だなあと思う。11歳で買春する場面はドン引きだけど、ま、時代もあるから不問に処すとして(-.-;) 。映画化されてるが、今現在どこからも配信されてなさそうで残念。短い物語だけに、映像もゆったりと楽しめそうなんだけどな。2022/10/26
あき
1
個人的メモ スーフィズム(イスラム神秘主義:信仰心そのものを重視、神との一体化を目指す)⇔スンナ派(主流派:戒律重視) 『目に見えないものの三部作』二作目(第一作『チベット聖者の教え』第三作『神さまとお話しした十二通の手紙』) フランスでのユダヤ人強制収容関連の作品『Wあるいは子供の頃の思い出』(ジョルジュ・ぺレック)『さよなら子供たち』(映画)2019/10/20