内容説明
度重なる戦い、肉親の死、三度の政略結婚、跡継ぎ争い。乱世の荒波に揉まれつつも、これを乗り越え、光彩を放った一人の女性―江(ごう)。「戦国三姉妹」のなかでも、茶々、初といった姉たちにくらべると江は、その歴史的役割に反して伝承資料が極端に少なく、あまりにも謎のベールに包まれている。伯父・信長、義兄・秀吉、義父・家康、夫・秀忠、長男・家光…天下人に囲まれた戦国の世の中心で、はたして江は何を見たのか?本書では、これまで見過ごされてきた重要史料を駆使しつつ、その人物像をより実証的に探り出すことによって、江にまつわるミステリーを解き明かしていく。
目次
第1章 織田信長の血筋
第2章 豊臣政権の担い手として
第3章 徳川将軍家の嫁として妻として
第4章 子育て戦争と養育訓
第5章 姉妹の結束を貫き大奥を仕切る
むすび 隠された生涯
著者等紹介
宮本義己[ミヤモトヨシミ]
1947年茨城県生まれ。國學院大学大学院文学研究科日本史学専攻博士課程修了。日本学術振興会奨励研究員、東京農業大学講師、帝京大学講師を経て、國學院大学文学部、および芝浦工業大学システム工学部講師を務める。日本中世・近世史を専攻するかたわら、独自の日本医道史・養生生活史の研究を進め、学術誌等に多くの論文を発表する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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うしうし
5
本書の一番の功績は、これまでほとんど注目されてなかった「溪心院文」の史料的価値を世に出したことにある。これを活用して、①小谷落城後にお市と三姉妹が織田信包の伊勢上野城に保護されていたとされていたが、実際は織田信次の守山城に保護されていたこと、②小谷落城時にお市が直筆の書状を秀吉に書いて、三姉妹の身柄の保障を求めるなど、秀吉を憎んでいたのではなく、秀吉を信頼していたこと、③江と佐治一成の婚姻の差配をしたのは秀吉ではなく、織田信雄であったこと、などの新見解が提出されている。2023/03/17