内容説明
日本を代表する繊維メーカー東レ。1970年代終盤、この東レはアップルの総販売元として名乗りを上げ、それを足がかりとしてハイテク産業への参入を狙っていた。奔放な西海岸のベンチャー企業と日本の重鎮企業が、ベストセラーパソコン「アップル2」をめぐって織り成すドラマは、アップル日本法人設立をめぐって壮絶に展開しはじめる。やがてキヤノン販売に場を移したアップルの日本戦略は、「マッキントッシュ」という16ビットパソコンの漢字化をめぐりふたたび暗礁へと乗り上げる。ウィンドウズ帝国がまだない当時、電子立国日本に単身で乗り込んできた青い瞳をしたパソコン「アップル2」そして「マッキントッシュ」をめぐる日本とアメリカの対立を描いた壮絶なドラマ。
目次
プロローグ サンフランシスコ1977年4月
第1部 西海岸の産物
第2章 青い瞳をしたパソコン
第3章 帰化への道
著者等紹介
斎藤由多加[サイトウユタカ]
1962年東京生まれ。マッキントッシュおよびコンピュータインターフェイスに関する著述多数。ゲームデザイナー/(株)ビバリウム代表取締役。「タワー」(1993年)では全米出版協会でベスト・シミュレーション・オブ・ザ・イヤーなど、「シーマン~禁断のペット~」(1999年)では文化庁メディア芸術祭をはじめ国内外で数多く受賞
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mizzan72
6
再読。まだ社名に「コンピュータ」がついていて、「Macintosh」と略さない方の名前で呼ぶ人の方が多かった時代、日本に「アップル」を紹介し浸透させた人々の記録。ちなみにぼくが初めてMacに触ったのは1992年頃、すでに日本法人も設立され、ジョブズは居なかった。でもジョブズの思い描いていた理想は、ファンの間でちゃんと共有できていたし、希望があった。本書に出てきた人たちの奮闘があったからこそ、ぼくたちがその恩恵を預かることができた。胸熱。2016/08/13
工作魂
1
6年掛かって書かれた労作だけあって凄い。ここまで取材して書かれたものが存在するとは。AppleIIからMacintoshまでの日本でのApple製品に見せられた人々の日本への導入や漢字化などでの苦悩が非常に克明に書かれていて素晴らしい。米国での開発談についてはあまたあるか、日本市場への対応について書かれた本書はとても貴重。2025/05/17
amanon
0
サブタイトルにもあるように、まさに「アップル日本上陸の軌跡」を綴った一冊。そして、それは日本における初期アップルの歴史であるのと同時に、日本におけるパソコン黎明期の歴史でもある。それにしても、今でこそパソコンでの日本語入力、漢字変換などごくごく普通のことであると認識されているが、初期のパソコンでは、それがどれだけ大変なことであったかということをまざまざを思い知らされる。今、こうしてPCを通じて色々なことができるというのは、こうした先人の血のにじむような努力の上に成り立っている…まさに頭が下がる思いがする。2011/11/02
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