内容説明
日常生活にふと紛れこむ奇妙な出来事。こころの隙間をとおして人生の真実が見えてくる。戦後ドイツを代表する女流作家の珠玉の短篇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
くさてる
17
なんとも不思議で落ち着かない、そんな短編集。あくまで普通小説と言ってもいい落ち着いた内容のものもあるのだけど、そんな中に不意に出てくる奇妙な味のものが良いです。なかでも、ありとあらゆる〝痛み〟を感じなくなった女性の日記「火中の足」と美しい下宿人が人の良い婦人の生活を奪っていく「天使」が忘れられない悪夢のようでした。2020/05/03
きゅー
15
よく知らずに手にとったが、とても愉しく読めた。日常に突如、非日常が紛れ込んでくるのだが、それが暴力的なまでの勢いで迫ってくる様子がすごい。「でぶ」は、偶然出会った太った女の子のことを気に食わない私の話だが、気持ちよく幕が閉じる。「六月半ばの真昼どき」でも、敵意(悪意)が反転する展開が心地よい。「雪どけ」はタイトルからして、ソ連の”雪どけ”をモチーフにしているのでは。冷戦のさなかにとりあえずの平和が訪れたが、いつまたそれが崩れるのかわからないという不安を夫婦に象徴させているのか。2012/07/24
ぐっちー
14
初めて読んだドイツの作家の短編集。饒舌に語られる日常の中に、何か厭なものが混ざり始めるが、他の人には分からない・・・。そんな不安な話が多かった。しかしその語り口はさっぱりしていて、近所のおしゃべりなおばちゃんの話を聞いているような明るさがある。表題作の他、夏の昼下がりの僅か数分の間に少女に起きたスリルを描く「長い影」、部屋に闖入した「怪鳥ロック」、絶望の黄泉路「船旅」が好み。2014/06/29
ふくしんづけ
13
簡潔にまとまっていながら、一篇一篇が鮮烈な印象と余韻を残す短編集。翻訳小説にしては、気に入った文章も多かった。「六月半ばの真昼どき」「雪どけ」「いつかあるとき」「作家稼業」「火中の足」「ある日、ある男が」「怪鳥ロック」「天使」「船旅」等数多いが、いちばんは〈おれたちはとうとうあいつに出会った〉の「白熊」。夫婦の関係性を描いたものが鋭く、特にこの短編は形の維持というところで避け難いあらゆる面での欺瞞を、最もおそろしい形で表出させるもので、一見ありがちな話だが、動物園に白熊という舞台装置が効いている。2023/01/18
hrn
0
『その昔、N市では』が面白かったので。収録作品がそこそこ被っていた。2023/07/10
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