内容説明
人魚娘と若い漁師。恋に落ちた二人が交わした哀しい契り。名嘉睦稔おきなわ版画シリーズ第1弾。
著者等紹介
名嘉睦稔[ナカボクネン]
版画家。1953年沖縄県伊是名島生まれ。大自然に育まれた豊かな感性から生み出される、ダイナミックかつ繊細な作品は、生きとし生けるものの魂の声を、時に優しく、時に力強く、私たちに伝えてくれる。版画の技法は裏手彩色と呼ばれるもので、墨であたりをつけるや一気に版木を彫り込み、その後、和紙に墨色を摺り、最後に紙を裏返して鮮やかな色彩をつけて完成させるというもの。また、その類稀な才能はとどまるところを知らず、彫刻、琉歌、作詞、作曲など様々な分野で日々旺盛に発揮されている。主な仕事として、1997年「地球温暖化防止京都会議」記念切手のための原画(木版画)を制作。2000年九州・沖縄サミット記念作品「万国津梁」シリーズ制作(外務省)。2001年秋、公開の映画「地球交響曲(ガイアシンフォニー)第四番」(龍村仁監督作品)に出演など多数
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感想・レビュー
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Rika
2
目が合う瞬間、吹き抜ける風、そんな言葉にすることさえ難しい美しさをぎゅっと閉じ込めた作品。強くて優しい言葉の数々は、本物の芸術家である睦稔さんだからこそ紡げるものだと思います。「何を目指して生きていらっしゃるんですか?」とお尋ねしたら、「人はね、死ぬために生きているんだよ」とさらりと返されました。野性的というより動物的なものを感じさせる方、雄大でありながら繊細な方、なにかの源流に触れているような気持ちになる方です。初めて読んだ時、思わず涙しました。人魚と人間の悲恋を描いた、心の琴線に触れる素敵な物語。2014/09/07
Rika
1
沖縄では古から、不安をもたらす夕暮れ時に、現実にはあり得ないことが起きるといわれる。その黄昏時こそ、紅逢黒逢の刻(あこうくろうのとき)である。 三日三晩 人魚娘は心ここにあらず 八日九日 嘉真羅は漁が手につかず 十昼十夜 人魚娘は切なくて涙がこぼれ 朔日望日 嘉真羅は胸が裂けそうになった つのる想いは恋になっていた 二十日夜の月がかかる水糸の上 二人はやっと逢えた 貝櫛と手拭を合わすようにして 互いの手を強く握った それから夜な夜な舟の上で 逢うようになった 二人は夢中になり 周りが見えなくなった 2015/08/11
Rika
0
東の干瀬が鳴るのは 人魚が人呼ぶ声 せつせつと聞こえても 返事をするものではない 隣といえど 異界と結ぶ縁を手繰ってはならない 島の誡になったというはなし2015/01/29
Yukotococo
0
涙がでる。力強い版が 美しく、言葉が音を聞かせてくれます。悲しくも命に溢れ生の強さを感じました。こんな物語は始めて!
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