内容説明
第1部「堺本の本文と編纂の方法」は、主に本文の構成面に焦点をあて、現存堺本がひとつの自立した作品として捉えるのに十分な要素を備えていることを述べる。具体的には、他系統本との本文比較によって、項目の流動、記事の重複といった現象が、諸本間でどのように展開しているかを分析する。堺本の構成の特徴とその機能とが明らかになろう。第2部「堺本の本文と生成・享受」では、主に本文の表現面について検討する。堺本の独自本文の編纂のされ方、独自表現の分析を通して、堺本の本文が一般的な『枕草子』理解からはみだすような性質を帯びていることを確認する。また、堺本の本文系統のうち宸翰本系統に分類される本文が、『枕草子』現存最古の写本である前田家本の本文と近いものであることを述べる。さらには、本書の検討をふまえた新たな本文分類案を提示する。最後に、本書で確かめ得た種々のことがらをふまえて、堺本の生成と享受の問題について考察する。
目次
堺本枕草子の再検討―「再構成本」という視点
第1部 堺本の本文と編纂の方法(複合体としての随想群とその展開性―暦日順随想群を中心に;項目の流動と表現の差異―『枕草子』諸本間の比較から;編纂の特性と構成力;類似記事の重出現象と編纂の指向性―『枕草子』諸本間の比較から)
第2部 堺本の本文と生成・享受(男性に関する随想群の編纂と表現;「女」と「宮仕へ」に関する記事の編纂と表現;堺本・前田家本における『白氏文集』受容―堺本の随想群と『和漢朗詠集』;“雪月夜”と“車”の景の再構成―「十二月十日よひの月いと明かきに」の段と一連の随想群をめぐって;堺本宸翰本系統の本文とその受容―前田家本との本文異同をめぐって;堺本の本文系統とその分類;堺本の成立と生成・享受;まとめと展望)
著者等紹介
山中悠希[ヤマナカユキ]
2004年早稲田大学第一文学部卒業。2006年早稲田大学大学院文学研究科修士課程修了。2009年早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程修了。2009年3月15日早稲田大学より博士(文学)の学位受領。2006年4月~2007年3月田園調布雙葉中学校・同高等学校非常勤講師。2007年4月~2009年3月日本学術振興会特別研究員(DC2)。2009年4月~2010年3月早稲田大学研究補助員、駒場東邦中学校・高等学校非常勤講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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