内容説明
日本で語り継がれる昔話はどこで誕生したのか?五大昔話のルーツをさぐる。「猿蟹合戦」「桃太郎」「舌切り雀」「かちかち山」「花咲か爺」に登場するキャラクターや物語の構成、話の背景を、日本各地に伝わる類話や東アジアの諸民族に伝わる類話と比較。異同を明らかにし、誕生の源を検討する。
目次
第1章 猿と蟹はなぜ争うのか?
第2章 「猿蟹合戦」は、どこで生まれたのか?
第3章 「桃太郎」はなぜキビ団子を持ってゆくのか?
第4章 日本の「桃太郎」とは、いったい何者か?
第5章 「舌切り雀」はどこから来たか?
第6章 爺はなぜ「舌切り雀」を追いかけるのか?
第7章 「カチカチ山」の爺は、なぜ「婆汁」を食べさせられるのか?
第8章 「カチカチ山」の狸は、なぜ何度も兎にだまされるのか?
第9章 「花咲か爺」は日本生まれの昔話か?
第10章 「花咲か爺」の犬はどこから来たのか?
著者等紹介
斧原孝守[オノハラタカシ]
1957年、大阪市生まれ。立命館大学文学部(東洋史学専攻)卒業。兵庫教育大学大学院修士課程修了。元奈良県立高等学校教諭。奈良県立大学シニアカレッジ講師。比較民俗学会、日本口承文芸学会会員。専門は比較説話学、特に東アジア諸民族の神話・昔話の比較研究(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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金監禾重
5
昔話の比較研究がとてもおもしろい。アジア(時には北米に至る)広域をまたにかけた比較で驚くほど似た話が遠く隔たった土地で共有されていたり、土地土地で微修正されていたり、切断や継ぎ足し、組み換えなど融通無碍である。さらには人類史の語られない何か(移動や交流)が明らかになりそうな、底知れない魅力がある。しかし時間軸の情報がほぼ無く、移動や交流がいつ起こったのか、どの方向で起こったのかの確定は難しい。客観性のある結論は得られないのではないか。2022/09/22
Humbaba
1
自分がとても幼いころから聞かされて育った昔話。それらはファンタジーでありながらも、日本の昔であろうと考えているのが自然である。そもそも昔話は地域によっても違っているので、何が正しいのかというのは判断が難しい。しかし、類似の話は多くの地域、それも日本の外にもたくさんあり、それらが交流していたということを考えれば多くの場所で自然発生したと考えるよりは、伝わってきたと考える方が自然である。2025/05/13
y
1
子どもの頃から親しんでいる猿蟹合戦やカチカチ山などの昔話が中国を中心とした東アジアにもあるとはびっくりでした。 各地の昔話と比較し源流を探っていて、とても面白かったのと、日本各地でも知らなかったバリエーションが掲載されていて、とても面白かったです。2023/07/21
wengou802
0
日本昔話と中国少数民族の昔話との意外なつながりを明らかにした書。 「言われてみれば不思議だ」と思える疑問を切り口に、類話の跡を追いかけて壮大な地域を行く旅に誘われる。 同じ話型の物語の分布を展望する視点と、土地や民族ごとの語りの差異を丁寧に見る視点とを行き来するとともに、 『蝸牛考』のように、中国大陸中心部からの流行が周縁部に伝わり、その地で保存されているという基本的な考え方が、 日本列島においても適用されたり、ミッシングリンクを見出したりする手法が、広く物事を推理するやり方のヒントを授けてくれる。 2022/10/18