出版社内容情報
【書籍内容紹介】
本書は、この500年の間に交わされた、作家や詩人の手紙をまとめた書簡集です。
下積み時代の苦労と野心、家族や愛の話、創作期の絶頂から人生の黄昏時に思うことまで……。
言葉を自在に操った作家たちが残した私信から、その濃密な人生模様を垣間見ることができます。
「大鴉」の修正を編集者に指示するポー、愛する人への手紙に詩を添えるゲーテ、
ジャン・バルジャンのごとく「闇夜」を照らそうとしたユゴー。
その筆跡からは書き手の息遣いまでが伝わって、
彼らの「知られざる作品」を読んでいるような感覚を覚えるかもしれません。
手紙原文は、各言語に対応した11人の専門家が翻訳しました。
書かれた時代背景や、作家・詩人についての解説も合わせてお楽しみください。
【池澤夏樹さん推薦文】
手紙を書く時、人は真意を伝えようと必死になる。
たとえ作家でも、また詩人でも。
─まず企画がいい。手紙というのはもっと読まれるべき文芸だから。
それに実物の写真を配するのも書き手の体温の感じがあっていい。
更にセレクションがよく、作家や詩人を簡潔に紹介する編者たちの文章がいい。
一通また一通と読んで、そのたびに何か一つ楽器が心に響くよう。
好きなのを1点選べば、筆跡ならこの手紙の4年後に自殺するシルヴィア・プラス。
文章ならドレスデンの大空襲を生き延びたことを家族に伝えるカート・ヴォネガット。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
93
作家直筆の原稿や手紙は、見ているだけで滋味深く面白い。当時どんな思いを抱えて文章を書いたのか、文学や人生のドラマが想像してしまう。作家の展覧会を見に行ったり原稿の写真版を入手していたが、日本人のものが主だったので、外国作家の直筆書簡集が出たのは何とも嬉しい。下積み時代の苦労を分かち合ったり、事件や批判に巻き込まれたり、恋愛や金銭面の悩みを打ち明ける相手がいたからこそ、彼らは作品を残せたのだ。特にワイルドの獄中書簡とツヴァイクの遺書は、どうしようもない社会の圧力に押し潰される詩人の悲痛な叫びが聞こえてくる。2023/03/28
くさてる
22
500年間に綴られた作家や詩人の手紙をまとめた書簡集。わたしには未知の作家の名前も多かったけれど、ブロンテ、ディケンズ、ウルフ、ヴォネガット、ケルアックにワイルドと、有名どころの名前が揃っている。手書きの文字の読みにくさ、現れる癖のようなもの、書き方、そんなものが生で見られるのは面白かった。日本からは与謝野晶子の手紙が選ばれています。2023/03/29
かふ
20
書簡体小説や作家の手紙は魅力的なものが多いが、一枚だけでは状況とかよくわからないので説明文でなるほどと思うが、この本の第一の魅力はなんと言ってもその書体だろう。書体から正確がわかるような、シャーロット・ブロンテは教師らしく整った見事な書体であるし、リルケとか神経質そのな細かい字で、何よりベケットがいじけたように中央に固まっていたり、コンラッドは力強く大胆だったり、筆跡を眺めているだけでも面白い。ヴォネガットは捕虜になったのを家族に知らせる手紙だけど筆跡は中学生みたいだ。絵入りだと魅力倍増だった。2023/10/19