内容説明
バンザイ攻撃、米軍の残虐行為、自決、集団投身自殺、そして斎藤中将の最後―。そのすべてを体験し目撃した士官、田中徳祐。500日にも及ぶ戦闘の間、著者が片時も離さず携行していた作戦地図、隊の行動、敵の動き、戦友の死などを記したメモに基づいて執筆された、実録サイパン戦記。
目次
序章 満州からサイパンへ
第1章 スキを突かれた守備隊
第2章 敵上陸 熾烈なジャングル戦
第3章 机上戦術に散る命
第4章 タッポーチョ山陥落
第5章 総攻撃
第6章 残虐の数々、この恨みいつか
第7章 援軍を夢みて
第8章 あゝ堂々のゲリラ戦
第9章 収容所潜入
第10章 さらばサイパン
著者等紹介
田中徳祐[タナカノリスケ]
大正9年1月1日生まれ。大阪府天王寺師範学校二部卒業。昭和16年、現役兵として満州九六〇部隊に入隊。17年、豊橋予備士官学校卒業。同年、陸軍少尉任官。19年、訓二五五一部隊(岡兵団)河村部隊甲副官としてサイパン島に転進。現役大尉に昇進。戦後五年間、公職追放。27年4月、教職に復帰。54年、大阪府和泉市立松尾小学校長を勇退(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Yasuhisa Ogura
3
いろいろな文献で、米軍の残虐行為を指摘するために引用されていたが、絶版となっていた。復刻されたので、早速購入。内容には、にわかに信じられたい部分もあるが(例えば、米軍パイロットに女性がいた、米軍が毒ガスを使用したなど)、実際にサイパン戦を戦われた著者の言葉は重い。著者は米軍の残虐行為を強く批判するが、その批判の対象は日本軍にも向けられる。個人的には、斉藤師団長が、酒を飲みながら指揮をとっていたという記述には、言葉を失う。2012/09/23
nakaji47
3
「太平洋の奇跡」として映画化された大場大尉の話は、あくまでもアメリカ人が書いた記録小説に過ぎないが、本書はGHQが発禁にしただけのことはある正に実録。米兵による民間人虐殺や毒ガスによる掃討作戦など、サイパン玉砕戦の実相が語られてゆく。長らく絶版だったが今回復刊ドットコムにより復刊された事は喜ばしい。2012/08/03
teitowoaruku
2
凄まじい米軍の残虐行為が目を惹くサイパン戦の戦記。信憑性に疑いがあるらしいが、何万という人が入り混じる戦争ではそういうことがあっても不思議ではないと思う。ただ敗戦の月になってもB29が半数も帰ってこなかったりと、盛ってる感のある記述は多い。2021/12/25
VC
2
一家心中する前に親が子供の鎌で頸部を切る、首を絞める、無理やり崖から落とす、石やこん棒で胸を叩き潰すなどは聞いたことがあるが、首を切り落としていたというのは初耳。発禁本ということだが、それは当時としては過激であったということであり、今となっては光人社が大量に出版している本とほぼ同じ内容なので、過激さを求めるという人にはお勧めできない。2012/10/28
yamatoshiuruhashi
2
サイパン島で、玉砕の名のもとに組織的抵抗を終わったのちも、生き延びゲリラ戦を展開した人物の手記。昭和20年秋まで徹底して抗戦、生き延び復員して間もなく記された手記には戦争の実相が描かれている。生々しく飛び散る血肉、屍体のつかった泉の水を飲みつつ戦闘行動。米軍も決してきれいごとではなく捕虜や民間人を惨殺していく描写。それでも圧倒的な真実は目を背けることを許さず、一気に読んでしまった。2012/07/21