内容説明
「西部戦線異常なし」と並ぶレマルクの代表作。第二次大戦前夜のパリ。ドイツからの亡命者である医師ラヴィックは、ある夜、セーヌ河畔を虚ろに彷徨う女ジョアンに出会う。ゲシュタポによる拷問、元恋人の死…、心に深い闇を抱える男と、無邪気なまでに愛情を求め続けるもどこか悲しさ漂う女。戦争の不吉な黒い影が忍び寄る都を舞台に、ふたりの絶望的な恋と葛藤を描く。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Willie the Wildcat
56
人間故に渇望する心の温もり。生きる術であり、生き甲斐である外科手術。ジャンノーやケートといった患者との交流が、時勢で流されそうになる自身の軸を見直す機会。そしてデュランの失敗手術の場面が決意表明。未来に踏み出すための過去の清算。その未来を暗示するかのような最後の場面の凱旋門。今は確かに見えないが、いつか灯が照らし出す!ジョアンとは、”時間軸”が掛け違ったんだろうなぁ。亡き父親推奨の映画、Bergman氏のロシア語で歌う場面は、今でも鮮明に頭に残っている。2017/12/03
はなまり
7
すごく読みたい時期が定期的に来る作品です。革命を終わらせた英雄であるナポレオンの凱旋門は「自由」の意味を知っているはず。なのに、あの時代にパリには「自由」を持たない人たちがたくさんいて、最後は凱旋門すら見えなくなってしまう。その後の歴史を思うと、今すぐその場に行って逃げてと伝えたくなる。できないと解っていても、悔しい。よくない影が遠くから静かに忍び寄ってくる雰囲気がリアルです。2018/11/24
m
7
宝塚雪組公演に向けて。読みにくく一日50ページが限度。ラヴィックのまわりくどさとジョアンのメンヘラぶりが読んでいて辛い。時代のせいで感情をストレートに表現出来なくなってしまったのか。島国の日本で育ったのでこれまで考えたことはなかったが、陸続きに違う国があるって怖い。平和な世の中なら便利なのだろうけど、有事の際にはすぐに攻め込まれる。最初から最後まで暗い話だった。宝塚はこれをどう魅せるのか、楽しみ。2018/07/27
wdzm
3
えらく引き込まれました。ただし後半のみ。最初から時代背景的なものを知って読んでたら違ったのかも。とにかく、長い。いろいろ冗長に並んでいて、それが味なのかもしれませんが、しかし主人公ラヴィックがわりとうざい子なのでどうにも……言ってることはわかるんですけど、自明なことをそんな長々やるな的ななにかが。個人的に、装飾的な文章が苦手なのかも。ただ、後半のなんというか「いろいろ押し迫ってくるような感じ」は、とても言葉にできないくらいです。ウーゼニーたん萌え。2009/04/12
yuri_azucena
2
20年ぶりに再演された舞台を機に手に取ったものの、電子書籍で隙間時間に読み進めていたため、読破まで半年以上…ジョアンだけでなくケイト・リュシェンヌなど、ひとりひとりの女性の個性が際立ち、登場人物ひとりひとりが不穏な時代でも精一杯生を煌めかせている様が印象的でした。2019/05/22
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