内容説明
かなしみって、なに?その夏、せかいをとりもどすため、ちいさなゆうれいとすごした四日間―。斉藤倫、三年ぶりの長篇書き下ろし。
著者等紹介
斉藤倫[サイトウリン]
1969年生まれ。詩人。『どろぼうのどろぼん』(福音館書店)で、第48回日本児童文学者協会新人賞、第64回小学館児童出版文化賞を受賞
西村ツチカ[ニシムラツチカ]
1984年生まれ。漫画家。2010年、短篇集『なかよし団の冒険』(徳間書店)でデビュー。同作で、第15回文化庁メディア芸術祭マンガ部門新人賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
はる
84
小学5年生のハジメは夏休みの間、田舎の祖母の家で過ごすことに。そんなある日、ハジメは小さな女の子の幽霊と出会う……。あらすじから予想したものとは少し違う印象。むしろ「悲しみ」という感情が失われた世界で、人々はどう感じて生きているか、そして「悲しみ」の感情を取り戻した時にどうなるのかを描くことがこの物語の主題。ふわふわとした不思議な物語ですが、終盤の展開がこの物語の全て。切なくも優しい、斎藤倫さんらしい繊細な世界でした。2023/07/28
seacalf
69
自分の生きている時代に斉藤倫さんがいることをとても幸せに思う。言葉を的確に使ってくれるだけで、なぜこんなにも心地好い気分になるのだろう。様々な場面でハッとさせてくれる。今回は可愛らしいゆうれいとの出会いから、ややライトな展開かなと思いきや、後半で怒涛のように心を揺さぶってくる。西村ツチカさんの画が豊富にあってドラマチックなシーンを目でも楽しませてくれる。今回は「かなしみ」を失うことが大きなテーマ。判断は読者に委ねられているが、やはりかなしみは必要なんだろうな。靴下がずり下がる度にこの物語を思い出しそうだ。2021/05/29
東谷くまみ
50
悲しみには後悔がつきまとう。あの頃じいちゃんの涙から逃げるように足が遠のいてしまった事や言い訳をしてロンのために毎日郡山まで帰らなかった事―悲しみと向き合うって身も心もボロボロになる。じゃあ悲しみなんていらない?ううん、違う。だって悲しむ事は今はいない大切な相手を想うこと。残された私達がその人達に想いを届ける大切な時間。溢れる想いを橋に換えてその人達に会えるように。悲しみは乗り越える必要なんてない。いつも、そばで、私と共にあるもの。「怖がらないで」大切な人を想う悲しみの中で流す涙はほら、こんなにも温かい。2021/11/25
yumiha
49
幽霊ネムちゃんの正体の予想は外れた。また、幽霊が絶滅危惧種(?)になりかけている理由は、法事とか墓参りとか減って来たからだろうという予想も外れた。そうだよね。斎藤倫がそんなありきたりの物語を書くはずないよね。後半に思いがけない展開が待っていて、私のありきたり予想を大きく裏切って、何気ない風景に潜んでいた伏線が繋がってくる様に驚く。そして、ネムちゃんが誰か分かった時、とても切なくなった。読み終えてから、もう一度ネムちゃんとの場面をパラパラと読み直してしまった。青みがかった銀色のカンナを見てみたい!2021/10/04
ワッピー
45
読み友さんのコメントから。父子家庭のハジメは小5の夏休みに祖母の家に預けられる。近くにできた空港で出会った女の子の幽霊ネムから幽霊はもはや絶滅しかかっていると伝えられる。謎のトラ女ミャオ・ター、托鉢僧ゲンゾウとともに彼岸の世界に紛れ込んだハジメの前に立ったのは・・・。そして幽霊が消えかかっている原因を作ったハジメの父も現われ、世界中から忘れられてしまったものを取り戻す決断をする。近未来を舞台にした正統派の行きて帰る物語で、ネムがハジメに講釈する「ゆうれいの国」の描写も興味深く、ミャオ・ターやゲンゾウが ⇒2021/09/27
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