出版社内容情報
一人の思想家の歩みをたどりながら、明治という時代の面白さと、現代につながる様々な問題を考える伝記文学の傑作。(N-4)
<読んであげるなら>---
<自分で読むなら>小学高学年から
内容説明
幕府を倒したのは、世の中を変えるためじゃなかったか。足軽の子に生まれ、ルソーに学び、人間の自由をもとめつづけた思想家・TN君とはいったい誰?その歩みをたどりながら、明治という時代のおもしろさ、そして現代にまでつながるさまざまな問題について考えよう。伝記文学の楽しさを満喫できる作品。小学校上級以上。
著者等紹介
なだいなだ[ナダイナダ]
1929年、東京に生まれる。53年慶応大学医学部を卒業後、パリ大学に留学、さらにWHOの留学生としてヨーロッパに学ぶ。以後、作家・精神科医として、人間のこころや時代のもたらす病ととりくんで、多面的な活躍をしている
司修[ツカサオサム]
1936年、群馬の前橋市に生まれる。郷里の詩人萩原朔太郎とE.アラン・ポーに親しみ、56年、絵画の道をこころざして上京。以降、絵画・彫刻・装丁・創作絵本など、多彩な分野に独自の個性を発揮している
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
棕櫚木庵
24
1/3) 藤村『夜明け前』や松本侑子『神と語って夢ならず』(「隠岐騒動」)を読んで,明治維新の「裏切られた革命」という面を強く感じたが,本書は,その裏切られた人々を「見まもりながら生きた人」として,「TN君」の生涯を描いた伝記.TN君は学者としての立場を守り,政略的配慮などはせずに真理を真理だと言い続けたという.それだけに,金のために節を曲げる仲間のためにと,晩年近く事業に手を出して失敗する姿は痛ましい.「自分の挫折の一生にたいする答」として『続一年有半』を残し,幸徳秋水に夢をつないで生涯を閉じた,と.2024/01/29
松本直哉
22
弾痕も生々しいパリ・コミューン直後のフランスで自由と権利の観念の庶民への浸透を肌で感じたTN君にとって、天長節に一斉に日の丸を掲げる情景も、条文を読みもせずに帝国憲法発布に浮かれるお祭り騒ぎも、不気味で無意味に思われた。ルソーの社会契約論の初めての日本語訳を手がけて民主主義の普及に努めても、現実は藩閥政治に壟断されて自由民権とは逆の方向に向かう。権威を嫌い、身なりに構わず、在野の学者として反骨を貫いた生涯は清々しい。秋水という号を弟子の幸徳に譲り未来を託すが幸徳も… 気味の悪い右傾化の進む今読むべき本2015/05/10
seraphim
16
TN君の人生を追いかけることで、明治という時代が見えてくる。自分が、明治がどんな時代だったのか、ほとんど知らなかったことに気づいた。現代では当たり前になっている様々な事柄が、先人達が色々な活動をすることで、少しずつ勝ち取ってきたのだということに、改めて気づかされた。知るということはとても大事なことだな。小学校上級以上とあるが、なかなか読みごたえのある本。読了するのに時間がかかった。読んで良かったと思う。2018/03/29
takeapple
12
ビブワングランプリに出る機会があり、この本を紹介した。それでまた読み直したのだが、何回目かなあ35年前に初めて読んでから(雑誌連載時も含めればもっと前かなあ)毎年一度は読み返している人生のバイブルだと思っている。総選挙後の政治状況、TN君がいた時と本当にそっくりだ。TN君も選挙の後こそ選挙民が、代表の行動を制限すること、国会での投票を選挙民の意見を聞いた上でなければできないようにしないと国民は投票日1日だけ主人で、あとはドレイになりさがってしまうと言っている。そのためには、選挙する人間たちの政治への関心を2021/11/07
頼ちゃん
12
伝記というより、歴史の本のようだ。教科書とは全く違う明治維新。視点が違うとこうも違うのか。恥ずかしながらしらなかった別の面を知った。2017/01/11