出版社内容情報
「おれは鹿の肉を食う。それはおれの血、おれの肉となる」。力強い詩と東洋的な細密画で、読者をシベリアの神秘的な森へ誘います。いのちへの畏敬を謳いあげる美しい絵本。
<読んであげるなら>5・6才から
<自分で読むなら>小学低学年から
著者等紹介
神沢利子[カンザワトシコ]
1924年1月29日、福岡県に生まれる。北海道、樺太(サハリン)で幼少期を過ごす。文化学院文学部を卒業。詩、童謡、童話の創作に長年活躍し、巌谷小波文芸賞、路傍の石文学賞、モービル児童文化賞、日本児童文学者協会賞、産経児童出版文化賞大賞、日本童謡賞など、数々の賞を受賞している。東京都在住
パヴリーシン,G.D.[パヴリーシン,G.D.][Pavlishin,Gennadiy Dmitriyevich]
1938年8月27日、旧ソ連のハバロフスク市に生まれる。極東美術専門学校を経て、ウラジヴォストーク総合大学歴史学部で学ぶ。「ロシア人民美術家」「ハバロフスク市名誉市民」の称号をもつ。ソ連国家賞、民族友好勲章、レーニン賞、ライプツィヒ図書博覧会金賞、世界絵本原画展(BIB)金のリンゴ賞など、国内外で数々の賞を受賞している。ハバロフスク市在住(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ぶち
120
読友さんの感想を拝見して、ぜひ読みたいと手に取った絵本です。どのページも画集を観ているかのような素晴らしい細密画で、思わず見入ってしまいます。お話はシベリアの森での鹿猟です。シベリアというと凍てついたツンドラの森という白黒の世界のイメージですが、この本に描かれた秋の森は黄金色に輝いて、シベリアのイメージが一新されます。そんな美しい景色とは無関係に、文章は獲物である鹿の命を貰って自身や家族がやっと生き延びることができるという厳しさを詩的に表現しています。素敵な絵本を教えてくださった読友さんに感謝です。2018/06/19
ふう
83
前回に続いて読友さんの感想で知った本。とても静かでまっすぐで、あゝこうやって生きることが始まりだったのだと思い知らされる作品でした。『おれは鹿の肉をくう それはおれの血おれの肉となる だからおれは鹿だ 鹿よおれの兄弟よ』厳しい自然と向かい合うとき、人はこんなに真剣に、そして謙虚になるのですね。絵もとてもきれいで、美しい森や川、空に惹き込まれていくようでした。人は大切なものを失いながら歩んできて、地球からも大切なものを奪ってしまいました。2018/06/25
アナクマ
49
狩猟する絵本。シベリア。◉おれは 鹿の肉を くう。それは おれの血 おれの肉となる。だから おれは 鹿だ。◉かつて子供のころに、牝鹿に耳をなめられたことのある男が、今夜は鹿を獲る。◉いっぽんの 骨も おらずに 解体する。ありがとう 息子の血 息子の肉となる 鹿よ。おれたちの 兄弟よ。解説無用。2019/02/02
マリリン
46
命を紡ぐ...犠牲という言葉は似合わない。シベリアを舞台に(いやモンゴル付近か?)何度この光景が繰り返され語り継がれてきたのだろうか。自然の営みの尊さが伝わってくる。動物や人間のみならず樹木や自然のなかに漂う空気まで緻密に描かれた情景に心安らぐ。捧げる行為が、授かる行為が、祈りでもあるような...2023/12/15
booklight
45
童話作家の神沢利子が文章を書き、シベリアの美術家のパヴリーシンが絵を描いたもの。文章は神話のように力強く、生命の輪廻を歌い、絵は克明に生を描きながら、東方の文化を感じさせる。『クマの子ウーフ』で有名な神沢さんがこんな作品も書くんだねそしてご存命!とか、ロシアの美術家とのコラボなんだとか、2004年と意外と最近?、とか色々不思議な背景はありつつ、雄大な物語とそれに合った壮大な細密画を楽しむことができた。2023/12/23