出版社内容情報
1931年夏、麻子の一家は、炭坑技師である父さんの赴任地、樺太に向かう。北の自然と暮らしを描く回想の物語。(N-6)
<読んであげるなら>---
<自分で読むなら>小学高学年から
内容説明
一九三一年の夏、麻子たち一家は、炭坑技師である父さんの赴任地、樺太の奥地に向かいます。柳蘭の花咲く原野を汽車でゆられていったその先に、麻子を待っていたのは、きらきらひかる川でした…。幼いころの作者の目に焼きついた北の自然と、子どもたちの生活を描いた回想の物語。小学校上級以上。
著者等紹介
神沢利子[カンザワトシコ]
1924年、福岡県にうまれ、北海道、樺太(サハリン)で幼少期をすごす。95年、それまでの作品、業績に対し、巌谷小波文芸賞、路傍の石文学賞、モービル児童文化賞を受賞する
瀬川康男[セガワヤスオ]
1932年、愛知県岡崎市にうまれる。60年に処女作『きつねのよめいり』を出版以来、その仕事は日本及び海外で高く評価されている
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
84
作者の神沢さんの幼児のころの体験をつづったものです。父親の関係で南樺太の地に転地されてそこでの体験記が中心となっています。今はロシア領ですが、当時は日本が半分を統治していたということで樺太の自然や生活が描かれています。毎日の小学校生活や周りの自然との触れ合い、あるいは山火事にあったりと幼児のころとしては珍しい体験などが数多くあります。2024/08/04
ネギっ子gen
49
【幼年の中にこそ、人間の「核」がある】ミヤビとライライさんに本書を教えられ――。1931年の夏、麻子たち一家は、炭坑技師である父さんの赴任地、樺太の奥地に向かう……。幼い頃の作者の目に焼きついた北の自然と、子どもたちの生活を描かれる。2003年刊。わたしが内地に渡って爾来50年。今もオホーツクの流氷や藻鼈川の流れ、雪の下の福寿草、餅つきなどを、本書を読みながら愛しく思い出す読書に――。<麻子の目の前を、川はいつもいつも流れていて休むことがない>と。わたしも、よく川の流れを長い時間見つめていたものです……⇒2025/02/11
Ribes triste
11
炭鉱技師の父の仕事のため、家族で樺太で生活することになった麻子の視点で描かれる物語。懐かしい子ども時代の記憶で終わらないのは、子どもが見ている世界が美しく正しいばかりではなく、大人の社会の複雑さもはらんでいるから。神沢さんの理知的な視点がさえわたる作品でした。瀬川さんの挿絵も美しい。2024/09/19
ぱせり
7
森や草原に囲まれた北限の集落。のびやかに遊ぶ子どものしなやかさに驚いてしまうが、実は容赦のない厳しい自然に抗う日々だった。死の不安。家族に感じる近しさと遠さ。大人の不公平さが子どもの領分に浸食してくる苦さ。男の子に許されて女の子に許されないこと。「あたし、おとなしくなりたくない」という言葉が印象的だった。2022/02/26
ロピケ
4
梯久美子さんの『サガレン』を読んでこの本の存在を知って読んでみたくなった。梯さんが「サハリンに行きたいと思ったきっかけのひとつがこの本だった。」と書いていたから。神沢さんの樺太での子供時代の経験を下敷きに書いた物語で、主人公麻子とその家族を中心に話は進んでいくのだが、がっしりとした父や優しい母、二人の兄、すぐ上の姉、やんちゃな弟のそれぞれに距離を感じるくらい自我に目覚めている。自然の厳しさと豊かさに加えて、友達の家庭の事情、ロシアや満州など日本の周辺国、父の会社の雇用の実態など社会を見つめる視点も。2023/07/01