出版社内容情報
よし子はまだひな人形を持っていない。お母さんが規格品を買い与える気になれないからです。ひなまつりを通して母と子の心の交流をすがすがしく描いた童話。
<読んであげるなら>5・6才から
<自分で読むなら>小学低学年から
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
絵本専門士 おはなし会 芽ぶっく
20
ひな祭りに父を亡くしたよし子。母とつつましく暮らす中で、自分のおひな様が欲しいと切に願う…。時代背景的に高齢者向けのおはなし会にどうか?とメンバーが持って来てくれました。 12月予定の4・6年生のブックトーク授業【テーマ 冬休みに読んでみよう】用に選書。2019/02/18
ぱせり
18
おひさなまって、形ではない、こういう思いのことなのだ、と思う。それは、おひなさまだけではない。おかあさんは、日々、心込めて、丁寧にていねいに暮らしてきたのだろう。そういう暮らしを想像し、その清々しい美しさ、豊かさにほっと息とつく。一方、間に合わせや、がさつで雑な思いも、ほどよく受けいれながら、なおかつ、豊かでいることはできないかと思う。 2017/03/02
ツキノ
16
読んでいないと思っていたけれど読んでいたのか。読みながら「あれ、この話知ってる?」と思っていたのでした。なんだか泣けたなぁ。規格品と手作り品との差…7年前の読書メーターに「古き佳きものと高度成長期の狭間で」と書いてあった。朝倉摂さんの絵が素晴らしくいい。2016/02/02
遠い日
16
三月三日は雛祭り、そしておとうさんの命日。雛人形にまつわるおかあさんの深い思いとその理由が、切実に描かれる。よし子へのおかあさんのことばにこめられた一生懸命な気持ちは、ただただお雛様に憧れてきたよし子を揺さぶる。物と人との切っても切れない美しいほんものの関係を、切々と描く石井さんのことばに宿る熱に、打たれる。2015/07/05
marmelo
11
いたわり合って暮らしている母子。その日は父の命日だから父の気持ちもそこに居合わせているかもしれない。よし子に縫って与えるブラウスやほぼ手製の雛人形は母が娘への気持ちを込めて伝える媒介物で、そこに託されている気持ちを実感するとき、物はよし子にとって一段と大切になる。慎ましく暮らす母子にとって、この小さな家での日常が幸せの原点。昭和らしい雰囲気を感じる素敵な物語。2017/03/01