内容説明
干潟―消えては現れる幽かな命の痕跡。2年後、父が死んだ―。干潟に父の日記が重ねあわされるとき、生命の脈動が聞こえ、希望が見えてくる。―伊奈信男賞受賞作品。
著者等紹介
太田順一[オオタジュンイチ]
1950年奈良県生まれ。早稲田大学政治経済学部中退。大阪写真専門学校(現・ビジュアルアーツ専門学校大阪)卒業。受賞:第十二回写真の会賞受賞(2000年)、日本写真協会第一回作家賞受賞(20〇4年)、第三四回伊奈信男賞受賞(2009年)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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アナクマ
26
干潟は生命のゆりかごだと思っていますが、本書は、大阪湾再生のための人工干潟を追った写真集。に、亡くなった父の手書きの日記を交互に差し挟む。◉老いの寂しさ・無常感の吐露、認知症で歪みゆく記述。対して干潟。揺蕩う水面、清濁相まった泡、砂、あるやなしやの儚い生命の記録。阪神の震災を経て “痕跡” に心を動かされたという後書きに納得。 ◉視点をどこに据えるかという命題をメモしておく。海水を顕微鏡で覗けば毎日が祭り。多様なカタチをした連中が賑やかに、死とともに踊っているはず。◉それと足跡。跡/痕はやはり重要。→2023/01/14
たまきら
21
孤独な、実直だが不器用で孤独な男(たち)の人生が浮き上がってくる写真群です。「つらい」という正直な気持ちは伝わってくる。けれども、能動的にどうしたらいいのか、は伝わってこない。さびしい。多くの感情が見え隠れするのに。そんな日記と干潟の対比が奇妙にマッチしていた。認知症の父親に胸を痛めている夫が、食い入るように本を眺めていた。2017/12/12
梅ちゃん
20
2018.04.01 大阪府岸和田市の沖合にある人工の干潟の写真と父の昭和62年からの日記の写真を合わせた写真集。おとうさんの日記は最初の頃はきちんと書かれていたが、晩年は認知症の為、殴り書きになり、ぐちゃぐちゃにに線が引かれて汚され、「つらい」という言葉が何度も書かれている。 変わっていく人と変わらない干潟の対比が物悲しく感じた。 いつか行く道か…。2018/04/01
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